ヴァイリーさんの呪いが解けて、しばらく経った頃…―。
獣化の呪いの噂も次第に消え、街の人も平和に暮らしている。
執事「本当に、○○様には何とお礼を言ってよいか……」
私は客間で、夕食をご馳走になっていた。
○○「そんな……私は何も」
執事「ヴァイリー様の、あんなに穏やかな表情は初めて見ます。○○様なら、呪いを解いてくれると思っておりました」
○○「……あの、呪いが解けたのはなぜなのでしょう……?」
私は気になっていたことを、思い切って執事さんに尋ねてみる。
執事「真実の愛……○○様がヴァイリー様を思いやる気持ちが、呪いを解いたのです」
何の臆面もなく言い切る執事さんの言葉に、私の頬は熱を帯びた。
あの時気づいてしまった、ヴァイリーさんへの私の気持ち。
(この気持ちが、真実の愛……?)
ヴァイリー「おう!戻ったぞ!」
その声を聴いて、私の胸が跳ねる。
街を視察に行っていたヴァイリーさんが、勢い良く入って来た。
執事「お帰りなさいませ。すぐに夕食と湯の支度をいたします」
執事さんは退出してしまい、私達は二人きりになった。
ヴァイリー「熱でもあんのか?顔、真っ赤だぞ」
ヴァイリーさんは、無邪気に私に聞いてくる。
○○「な、なんでもないですっ!」
(ドキドキして、ヴァイリーさんの顔が見れない……)
ヴァイリー「ホントか?オマエの心臓の音、すげぇ聴こえるんだけど」
○○「……っ!」
(獣人って、そういえば耳がすごくいいって……)
○○「すみません……失礼します!」
恥ずかしさに耐えきれず、私はその場を去ろうとした。
ヴァイリー「あっ、おい……」
ドアノブに手をかけたとき、大きな手がその上から重ねられた。
○○「……っ!」
ヴァイリーさんが、すぐ後ろに立っていた。
ヴァイリー「……待てよ」
彼はもう一方の手をトンとドアにつき、私を囲う。
(背中が、熱い……)
まるで後ろから抱きしめられているようで、ヴァイリーさんの体温が私に伝わってくる。
○○「あ、あの……」
ヴァイリー「……オマエさ、あの時」
(あの時って……)
ー----
○○「私は……ヴァイリーさんのことが……」
ー----
○○「あっ、あのっ……私、もうこれで失礼します!」
言い募って、ヴァイリーさんの方を振り返ると……心配そうに私を見つめるヴァイリーさんと目が合い、また頬が熱くなってしまう。
ヴァイリー「オマエ、本当に熱ないのか?顔色が……」
○○「……っ!」
ヴァイリーさんが、私の額に手を当てる。
○○「……だ、大丈夫です!でもすみません、ちょっと休んできます」
高鳴る胸を落ち着かせたくて、私はその場を離れた。
去って行く○○の背中を、ヴァイリーは見つめていた。
ヴァイリー「……やっぱちゃんと、言わなきゃか」
さっきまで○○の額に触れていた手の熱を感じながら、ヴァイリーはひとりつぶやいた…―。