その翌日…-。
私はヴァイリーさんと城下街を見学に来ていた。
ヴァイリー「獣人っつっても、普通の人間とあんま変わんねぇだろ」
街の人達は、耳が頭にあったり尻尾が生えたりするけれど、確かに獣というよりは、普通の人の姿に近かった。
ヴァイリーさんは、歩調を私に合わせて街を案内してくれる。
(昨日はすぐ帰れって、言われたけど……)
ヴァイリー「……なんだよ、ヘンな顔して」
○○「あ、いえ……」
ヴァイリー「……案内はしてやるけど、これ終わったら、なるべく早く帰れよ」
(……やっぱり)
キッパリと言い切られてしまい、胸が少し痛む。
ヴァイリーさんは、うつむく私を見やり、ため息を吐いた。
ヴァイリー「別に、オマエが嫌いなワケじゃ……」
??「おや、ヴァイリー様!」
その時、一人の男性に声をかけられた。
ヴァイリー「おう、おっちゃん! 相変わらず忙しそうだな」
おっちゃんと呼ばれたその人は、値札の貼られた大きな荷物をたくさん抱えていた。
(商人さん……なのかな?)
街の人「ヴァイリー様もスミにおけないねぇ、こんなかわいい子連れて」
ヴァイリー「……っ! 違うって! コイツはそんなんじゃ……」
うろたえるヴァイリーさんの横で、私の頬も少し熱くなる。
街の人「照れない照れない! 昔っからアンタ本当、素直じゃないな! ハハハ…」
ヴァイリー「ったく……油売ってていいのかよ、おっちゃん」
街の人「おっとそうだった! 物騒な噂で武器の仕入れが追いつかなくてさ。大忙しなんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、ヴァイリーさんの表情が一変した。
街の人「ご存じないですかい?獣化の呪いが出たって」
(獣化の呪い……?)
ヴァイリーさんを見ると、とても悲しそうな表情を浮かべていた。
(ヴァイリーさん……?)
街の人「ヴァイリー様も気をつけてな。 ……そうだお嬢さん、お近づきのしるしにこれやるよ!」
男性はそう言って、ずしりとした大きな袋を私に手渡した。
(わっ……! 重い……)
○○「あ、あの……?」
街の人「この辺で採れた木の実の詰め合わせさ! ヴァイリー様と食べてくれよ」
そうして男性は忙しそうに、その場を去って行った。
ヴァイリー「……ったく、あのおっちゃんは。ホラ、貸せ」
ヴァイリーさんは、私の腕から袋を奪った。
○○「ありがとうございます」
ヴァイリー「礼を言われるほどのことじゃねーよ」
ヴァイリーさんは、ふいっと顔を背けてしまう。
ヴァイリー「……そろそろ日が暮れるな。城へ戻るぞ」
○○「あの……さっきの噂って……?」
ヴァイリー「オマエには関係ない」
恐る恐る尋ねてみるものの、冷たくつき放されてしまった。
(……冷たかったり、優しかったり。それに呪いの話を聞いた時のあの表情は……)
(本当のヴァイリーさんって、どんな人……?)
夕陽に照らしだされるヴァイリーさんの横顔を見ていると、なぜか胸が苦しくなった。