獣人の国・ヴェリティア・影の月…-。
木々の隙間から差し込む暖かな光に包まれながら、私は城へと続く道を歩いていた。
(なんて綺麗な森……)
しばらく進むと、執事さんとヴァイリーさんが私を待ってくれていた。
老執事「ようこそ、○○様」
微笑む執事さんの優しい表情と対照的に、ヴァイリーさんは険しい顔をしている。
ヴァイリー「聞いてねぇぞ! この国にコイツを招待したなんて」
老執事「ヴァイリー様を目覚めさせてくださったのです。お礼をしなければ」
ヴァイリー「……オマエ、ユメクイとも戦ったのか?」
ヴァイリーさんは怪訝そうに私に尋ねる。
○○「えっ……はい……」
ヴァイリー「信じらんねーな。オマエみたいなのが」
不機嫌そうな彼の様子が気まずく、私はしゅんとしてしまう。すると…―。
ヴァイリー「いや、ちがっ……! オマエちっさいし、細いし……驚いたっつーか」
ヴァイリーさんは目を泳がせ、慌てた様子を見せる。
(……私が黙ってしまったことを気にしてくれたのかな?)
ヴァイリー「わ……わかったよ!! ちょっとだけもてなしてやる。すんだらすぐ帰れよ! それと……目覚めさせてくれて……ありがとな」
ヴァイリーさんはつぶやくように私にお礼を言って、お城へと踵を返した。
(……お世話になって、いいのかな?)
ヴァイリー「何ボサッとしてんだよ、行くぞ!」
○○「はっ、はい!」
執事さんに一礼し、私は先を行く彼の大きな背中を追った。
執事はその場にたたずみ、二人の背中を見つめていた。
老執事「……○○様なら、ヴァイリー様の呪いを……」