第1話 ブランデーの王子様

ブランデーの国・ヴァンブリュレ 影の月…―。

指輪からもたらされた光の中で、新たに一人の王子が目を覚ました。

??「う……まぶしいな、ずいぶん長く眠っていたみたいだが……」

頭を左右に振り動かすと、その人は私に視線を合わせた。

??「ありゃ、俺は女の子に助けられたのか……ありがと、お嬢さん」

○○「あなたは……?」

マルタン「俺かい?俺の名前はマルタン。ブランデーの国の王子……つうには少し年を取り過ぎてるかな」

マルタンさんは、あごひげに指をやると、喉の奥を鳴らして笑った。

(ブランデーの国の王子様……この人が?)

白いソフトハットに深紅のシャツ、緑色のスカーフを品良く着こなしていて…―。

口元に浮かべられた余裕のある笑みが、いかにも大人びて見える。

マルタン「できれば、君の名前も聞いていいかな?」

○○「あ……すみません、お名前を聞くなら、まず自分からですよね」

マルタン「いいや、俺は構わないよ。けど、君みたいなきれいなお嬢さんに出会って、名前も聞かないんじゃ男が廃るだろ?」

○○「……っ」

私の手を取ったマルタンさんが、指先に口づける。あまりにも自然に口づけられて、胸が大きく跳ねた。

○○「……○○です」

マルタン「へえ、○○ちゃんか。姿に違わずカワイイ名前だ……。君のようなお嬢さんに助けられて、ただで帰すわけにはいかないね」

マルタンさんは帽子を被り直すと、もう一度口元に、柔らかい笑みを浮かべた…―。

 

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