空には、星がきらきらと瞬いている…―。
リカの口から出た、普段の彼らしくもない言葉…―。
リカ「俺がこの国の王子だってバレたら、普通の付き合いはできなくなるかもしれないだろ?」
私はしばらく言葉を失って、じっとその寂しそうな横顔を見つめていた。
○○「……」
リカ「……なんだよ、悪いかよ?」
○○「悪いとかではなくて……」
首を左右に振って、彼と視線を合わせる。
リカ「仕方ないだろ、俺が王子なのは変えられないし。 けど……違う自分になれば、俺は楽しく笑ってられるんだ」
○○「違う自分……?」
その言葉に、何か違和感を感じる。
○○「そうなの……かな」
リカ「何が言いたいんだよ、お前」
○○「だって……じゃあ、街で過ごしたリカは、リカじゃなかったってこと?」
リカ「……そんなわけないだろ」
○○「だったら、やっぱりリカはリカだよ。 ダークなんて名前を使わなくても……リカと一緒にいてくれる人は、たくさんいるよ」
リカ「……」
私の言葉に、リカの黄金色の瞳がわずかに揺れた。
リカ「あー……うるせえ女」
○○「リカ…―」
リカ「だったら…―」
ぎゅっと痛いくらいに、彼の手が私の手首を掴んだ。リカ「○○、お前も傍にいてくれるのか?」
○○「……っ、リカ……さん?」
驚きと緊張からか、思わずそう呼んでしまうと…―。
リカ「お前なぁ。 リカさんじゃなくて、リカって呼べよ。 なあ、いてくれんのか?」
恐れるように、彼の指先からは力が抜ける。
リカ「俺が……お前を欲しいっていったら、いてくれるのかよ……」
○○「……」
瞳が、真っ直ぐに私を射ぬく。
ずっと無愛想な表情に見え隠れしていた、彼の切ない感情が、今はっきりと私に向けられている。
リカ「俺、拒否されるの、すっげー怖いんだけど?」
○○「リカ……」
(嫌じゃない、傍にいてあげたい)
けれど、純粋な想いをぶつけられて、受け取ることが怖くなる。
もし、彼を傷つけてしまったらと考えると……
○○「リカのこと、拒否する人なんていないよ……」
リカ「違う、俺は皆じゃなくて、お前に拒否されたくない」
声が大きくなって、手首を掴む力が強くなった。
彼の声の響きに、強い想いを感じて、私の胸の中で何かが弾けた。
○○「私……リカと一緒にいる」
リカ「じゃあ俺のこと、好きなのか?」
○○「……っ」
どう答えていいかわからなくなって、
どうしても上手な答え方が見つからなくて……
リカ「なんとか言ったらどうなんだよ」
○○「……」
気持ちがいっぱいになって、言葉を紡ぐことができず、私の手首を握る彼の手に、もう片方に手をそっと重ねた。
リカ「……」
すると、彼は可笑しそうに笑った。
私との距離をぐっと詰めて、鼻先が触れ合いそうな距離で見つめ合う。
リカ「○○……」
身を寄せると、彼の空いた方の手が自然と私の膝に重ねられた。
低い声で名前を呼んで、指先が太腿へと足を滑っていく。
彼の指の腹の感覚がくすぐったくて……
心臓もうるさいくらいに私の中で鳴り始めて……
○○「リ、リカ……!?」
慌てて彼の手を振り払おうとすると、彼の口元に無邪気な笑みが浮かんだ。
リカ「お前、柔らけぇのな……もっと触りたい」
○○「え……」
そんな顔をされてしまうと、振り払いたくても払えない。
私は結局、恥ずかしさにうつむく事しかできなくて目をつむった。
リカ「そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ?」
耳元に聞こえてきたのは、少し甘えるような彼の声……
○○「だって…―!」
顔を上げると、リカの顔の後ろに満天の星空が見えた。
○○「あ……」
(綺麗……)
口にしようとした言葉は、彼の指先で遮られた。
唇に当てられたリカの長い指先……
リカ「ここ誰も、来ないし。 俺を寂しがらせないでよ……」
消えそうな言葉が耳元をくすぐったかと思うと、ぎゅっと彼に抱き締められた。
リカ「離したくない」
胸元から伝わる彼の鼓動は、私と同じ速さで鳴っている。
もう隠れることのない、リカの純粋すぎる感情が甘く溢れて……
私はそれに応えるように、ぎゅっと彼の腕を掴んだ…―。
おわり