○○がこの城に滞在し始めてから、数日後の真夜中…―。
リカ「まったく……危機感ないのはどっちだよ」
俺は自室に招き入れた彼女を壁際に追い詰めた後、至近距離まで顔を近づけた。
○○「リ、リカ?」
リカ「……」
(ちょっと誘ったぐらいで簡単についてきやがって)
(人の心配する前に自分の心配しろってんだよ)
(ったく。今夜は絶対、逃がさねーから……なっ!)
○○「……っ!」
○○の逃げ道を塞ぐかのように、わざと大きな音を立てて左足を壁に叩きつけると、彼女は驚いたように目を見開いていた。
リカ「……」
○○「な、何……?」
○○は俺の左足を見つめた後、なおも驚きの表情を浮かべながら言葉を紡いだ。
リカ「お前の方が、よっぽど危機感ないんじゃねえのって言ってるんだよ」
○○「え…―」
リカ「男の部屋に、こんな夜にくるとかさ……」
俺が口の端を吊り上げて笑みを浮かべながらそう言うと、○○は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
(へえ……いいな、その表情)
どこかうろたえるような彼女の表情と仕草は、俺の嗜虐心をくずぐり……
リカ「それとも、俺にもう一度会いたかったって、そういうこと?」
俺はついつい目を細めながら彼女を煽ってしまう。
けれど……
○○「……」
(なんだよ、だんまりか?)
目の前の○○へと、さらに顔を近づける。
すると、彼女は肩を縮こまらせて俺を見上げた。
リカ「おい、怯えてるんじゃねえよ……俺の目を見ろ」
(もしかしていじめ過ぎたか? けど……)
(……本気で拒否されんのは、怖えよ)
俺が内心脅えながら○○を見つめると、彼女はわずかに視線を動かし……
どこか恥ずかしそうにしつつも、素直に俺の目を見つめる。
(……っ)
心臓が大きく跳ね上がり、鼓動が早まっていく。
(お前は本当に、何なんだよ)
(やたら俺のこと心配するくせに、そうやって無防備な顔、簡単に見せやがって……)
○○を見つめれば見つめるほどに、胸の奥から愛おしさが込み上げる。
そして……
リカ「○○……俺は、お前を見てると……」
想いを込めながら、初めて彼女の名前を呼ぶ。
(……っ)
(やばい。名前呼ぶだけで、こんなに切なくなるなんて……)
(○○……)
○○「……っ」
俺は胸の衝動に突き動かされるまま、彼女の唇を奪う。
○○「んっ……リカ……」
(……!)
(ったく。そんなふうに名前呼ぶなんて、反則だろ……)
優しい口づけは彼女への愛おしさと共に、徐々に深くそして激しものに変わっていく。
○○「……っ」
そうして熱に浮かされ、どれくらい時間が経ったかわからなくなった頃……
リカ「拒まないんだ?」
唇を離した俺は、○○に悪戯っぽい笑みを向けた。
○○「……あ」
今まで以上に頬を赤く染めた○○が、少しの逡巡の後言葉を紡ぎ始める。
けれども……
リカ「お前。変な奴だから……傍に置いておきたい。 ちょっと前から、そう思ってた」
○○「え……」
俺が○○の言葉を遮るように耳元でささやくと、彼女は驚きの表情を浮かべていた。
(……ハハッ、何だよその顔)
(でもまあ、無理ねーか。そういうの、一度も言ったことなかったもんな)
(けど……もう、見てるだけなんて無理。我慢できねーよ)
リカ「俺……勝負事は引きが強いんだ。 お前といたら、楽しめるだろ?」
そう言って俺は、指先で彼女の顎を上向きに傾ける。
そして……
○○「んっ……」
もう一度唇を重ね、彼女の顎に添えていた指を首筋に伝わせ、そのまま胸元まで下ろしていく。
そうして俺が熱を帯びた目で彼女を見つめると……
リカ「○○、目をそらすな、ちゃんと俺のこと見ろよ」
○○「あ……」
恥じらうように目をそらす○○を叱り、再び唇を重ねた俺は、さらに高まる熱に突き動かされ、彼女をその場に押し倒す。
(○○……)
(これからもずっとずっと、俺を……)
(俺のことだけを見てろよ)
そうして俺たちは、なおも体中の熱を伝え合うかのようなキスを交わし……
身も心もとろけてしまいそうな、熱いひと時を過ごしたのだった…―。
おわり