太陽7話 危機感

○○「どうして名前を変えて、街で遊んでたりするんですか?」

リカ「……皆の遊びが面白そうだから?」

一国の王子という身分にも関わらず、自由気ままに街を出歩くリカ……

○○「面白そうって……本当にそれだけが、理由なんですか?」

リカ「うるせえ女だな。そう言ってるだろ?」

(護衛を一人も連れずに、街を遊び歩くなんて……)

○○「もし、誰か悪い人に命を狙われたり、事件や事故に巻き込まれたらどうするんですか?」

リカ「……俺が?」

○○「今の会話でリカ以外に誰がいるんですか!」

リカ「ああ……それもそうか」

○○「そうか、じゃないですよ」

リカ「ははっ、心配しすぎだって!」

うつむく私を見て、リカが夜だというのに大きな声で笑い出した。

○○「笑いごとじゃ…―!」

ー----

リカ「どうだった?」

兵士「リカ様のご提案の通り、見回りのルートを変えましたら、先日の犯人も無事捕らえられました! 街の者達も感謝しているようです。さすが、リカ様です」

ー----

○○「この前、中庭で兵士と話してるのを聞きました。 犯人がどうとかって、やっぱり危ないんじゃ…―」

リカ「だから、そのための市内警備だろっ!」

○○「……っ」

一瞬、真面目な顔になって、リカは声を大きくした。

リカ「俺の国は、そんな悪いことが万が一にでも起こるような政治はしてない。 犯人って言ったのだって、あれはただの食い逃げ犯だ」

○○「え……食い逃げ……?」

リカ「そう、ショコラの食い逃げ。 この国でショコラは有名だろ? 季節の変わり目は新作も数多く出るから、ちょっとした観光地になるんだ」

○○「そう……だったんですか」

呆気に取られて、ポカンと口を開けるしかない。

リカ「だいたい俺の国は治安がいいことで有名なんだよ、襲われるとかありえない。 それに、街の奴の輪の中に入って、初めてわかることもあるしな」

そう口にする彼の顔は、確かに一国の王子の顔だった。

凛々しい瞳は、責任感に満ちていて、先ほどまでの奔放さは見られない。

○○「リカ……」

(ちゃんと……国のことを考えて、街で過ごしてるんだ)

リカ「何?」

○○「ごめんなさい……私、何もわかってなくて」

リカ「……」

リカは、彼の首筋にある刺青に右手で触れながら、静かに瞳を閉じた。

リカ「……別に。本当に街には面白いから行ってるだけ。 俺はあそこが好きだから、変なことが起こったりしたら俺も困るし」

ー----

従者「リカ様、今度の市議会での議題ですが…―」

リカ「ああ、街の者とすでに打ち合わせている。問題ない」

ー----

その言葉に、城で真剣な顔で政務を行う、リカの様子を思い出した。

胸の鼓動が早くなり、私は知らずのうちに彼の瞳に見惚れていた。

(何だろう、この気持ち……)

高鳴る胸をぎゅっと手で押さえて、じっと彼を見ていると……

リカ「ははっ」

突然、リカが可笑しそうに笑い出した。

○○「な、何?」

リカ「不用心だとか、俺の心配してるけどよ……お前、人のこと言えねえな」

○○「どういうこと?」

リカ「呆れたヤツ……わかんねえのか?」

彼の言葉の真意がわからず、瞳を瞬かせていると…―。

リカ「まったく……危機感ないのはどっちだよ」

○○「っ!?」

不意に、彼の指先が強引に私の体を引き寄せた。

壁際に背中を押し付けられて、気づけばあっという間に、目の前にはリカの不敵な笑みが迫っていた…―。

 

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