第4話 お城のリカ・街のダーク

リカさんにこの国に招待された私は、数日間城にお世話されることになった。

けれど…―。

リカ「そうか……じゃあ、ゆっくり過ごせよ。俺には決まった予定はないからいつでも付き合ってやる」

そう言ってたリカさんは、毎日街へ行っているようで、城にはほとんどいなかった。

明るい陽射しが降り注ぐ中、中庭に出てみると……

(あ……)

リカ「……」

リカさんが、ベンチにひとりで座っていた。

気だるそうにため息を吐いて、空を仰ぎ見ている。

(リカさん……?)

その瞳が寂しそうに揺れた気がして、なぜだか胸が詰まった。

○○「リカさ…―」

兵士「リカ様、先日の市内警備の件ですが……」

声をかけようとしたとき、城の兵士さんがリカさんのもとへとやってきた。

リカ「……どうだった?」

兵士「リカ様のご提案の通り、見回りのルートを変えましたら、先日の犯人も無事捕えられました! 街の者達も感謝しているようです。さすが、リカ様です」

リカさんを前にして、尊敬の眼差しを兵士が浮かべている。

(リカさん、お城の人達に敬われてるんだ)

リカ「そうか、それは良かった」

リカさんがかすかに笑う。

その顔は、凛とした王子様らしい顔つきだった。

(あんな顔もするんだ……)

柱の影からその様子をうかがっていると……

リカ「……」

こちらに気づいたリカさんが私を見て、眉をひそめた。

(え……)

リカさんは兵士さんに手を上げて軽く挨拶をすると、こちらへ大股でやってくる。

リカ「……」

(立ち聞きしてたこと、怒ってる……?)

不機嫌そうなリカさんの表情に、身を固くしていると…―。

リカ「おい、お前、今日暇か?」

○○「え?」

そう、リカさんに問われて……

○○「はい、特に予定はないです」

そう言うと、リカさんが少しだけ笑ってくれた気がした。

リカ「ならすぐに出掛ける準備をしろ、街に出たい。 天気いいし、城の中いても暇だろ」

(よかった……怒ってたわけじゃなかったんだ)

安堵でほっと息を吐く私を見て、リカさんが怪訝そうな顔をする。

リカ「何だよ」

○○「い、いいえ」

リカ「行くぞ」

私はリカさんに半ば強引に誘われて、ショコルーテの城下町へ出掛けることにした…―。

ショコルーテの街は、今日も甘い香りを漂わせながら、賑わいを見せていた。

リカさんは特に目的があるわけでもないようで、私を連れて街を歩き回っていた。

途中、広場に戻ると……

街の青年「ダークじゃないか! 久しぶりだな」

リカ「ん……? ああ、お前か」

街の青年「お前か、じゃねーよ。今度うちの店で新作を出すことになったんだ。 サービスしてやっから、今度また昼飯でも食いに来いよ」

リカ「どうだかな。この前のは、ちょっとデザートが甘すぎだったし」

言葉は皮肉めいていたけれど、リカさんも、青年に楽しそうに笑いかける。

その顔は、城の中庭で見た表情とは全然違う、無邪気な笑顔だった。

街の青年「手厳しいなあ。ま、お前の味覚は頼りにしてるよ!」

青年は屈託ない笑顔のまま、リカさんに手を振って去っていく。

(そういえば、どうしてリカさんは街ではダークって呼ばれてるのかな?)

○○「……」

リカ「なんだよ、人の顔じろじろ見て」

目をすがめるリカさんに……

○○「お二人が、すごく楽しそうだったから、いいなって」

そう言うと、リカさんは照れくさそうに頭を掻いた。

リカ「ああ……あいつは昔からの知り合いだから。 あいつは、この辺りでレストランをやってる店主。 昔からこうして忍びで街に出た時は、よく飯食いに寄るんだ」

(お忍びっていうわりには、堂々としてるけど……)

○○「なんだか意外でした」

リカ「何が?」

○○「リカさん、城の皆さんにも街の人達にも慕われているようだから」

リカ「……」

私の返事を聞くなり、リカさんはぷっと吹き出した…―。

 

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