太陽が沈み、世界が夜の闇に包まれる頃…―。
ミカエラ「○○……」
僕はベッドに身を預けながら、彼女の名前をそっとつぶやく。
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ミカエラ「ごめん……これは僕の……ただのミカエラとしての君へのお願いなんだけど、今夜……僕の部屋に来てほしい……」
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ミカエラ「……最悪だな、あんなふうにお願いしたら、○○が断れるはずないのに」
(それに……今夜だけでいいから、慰めてほしい……なんて)
僕はこれから自分が○○にしようとしていることに、最低の気分を抱きながら彼女を待ち続ける。
ミカエラ「○○の優しさを利用して……我ながら、とんだ卑怯者だ。……いっそ、このまま、このままの君が、僕を見捨てて部屋に来なければ、君を傷つけずに済むのかもしれない……」
身勝手にも程がある言葉は、誰に届くこともなく闇に溶けていく。
その時だった。
○○「ミカエラさん……?入りますよ?」
部屋の扉が静かに開き、遠慮がちな○○の声が聞こえる。
(……やっぱり君は、来てしまったんだね。来てくれて嬉しい……はずなのに。それなのに……)
罪悪感に支配された体が、鉛のように重い。
(出迎えなきゃ……)
そう思いながらも、僕はベッドに横たわったまま黙って待ち続けた。
そうしてすぐ傍に、○○の気配を感じた、その時……
○○「ミカエラさ――……あっ!」
(ごめん……!)
彼女の手を取って、自分の体の上へと引き寄せる。
ミカエラ「○○……」
○○「え……?」
月明かりの中、僕は○○をじっと見つめた。
そんな僕を、彼女は驚いたように見つめ返す。
○○「ミカエラさん……ですよ、ね?」
ミカエラ「うん……」
短く返事をして、静かに○○を見上げる。
すると彼女の瞳には、僕を労わるような色が浮かんでいて……
(……どうしてそんなに優しいの。 僕には、君に優しくしてもらう資格なんてないのに。そんな顔をされたら……)
○○「大丈夫ですか? いつものミカエラさんじゃないみた…―」
彼女に言葉をかけられる度に、胸の奥の気持ちが洪水のように渦巻く。
(苦しい……)
ミカエラ「あんなやり方しかできなかった……でも、あれしか方法がなかったんだ……」
○○「え……?」
僕は彼女の言葉を遮るように、胸の内を吐露する。
そして……
ミカエラ「苦しいよ……○○……お願い……今日だけ、僕のことを慰めて……」
心の中の悲しみや寂しさを言葉に乗せ、目の前の優しい彼女にぶつけた。
○○「……っ」
ミカエラ「○○……だめ?」
問いかけるような素振りを見せながら、○○を追いこんでゆく。
すると、次の瞬間…―。
○○「ミカエラさん……」
彼女は僕の頬に、そっと唇を落とす。
その口づけは、僕の全てを包み込むような優しさに溢れていて……
ミカエラ「○○……」
○○の両頬に手を添えて、静かに引き寄せる。
そして彼女の髪が頬に触れる感触にくすぐったさを覚えながら、その柔らかな唇に口づけた。
○○「っ……」
暗い部屋に、互いを求める二人の吐息が小さく響く。
次第にそれは、激しさを増していって……。
○○「ミカエラ、さ…―」
ミカエラ「……」
息をつこうと顔を上げる○○の頭に手を添えて、半ば強引に引き寄せながら再び深く口づける。
(このまま、ずっと……朝が来るまでは、こうしていたい……)
彼女の温もりを求める度に、心を蝕む負の感情が消えてゆく。
そうして僕は、この夜だけに許された優しい温もりに、いつまでも甘え続けた。
おわり。