第4話 意外な一面

翌日…―。

私は城の客間にある窓から、昨日と同じ色に染まる街並みを見て、ミカエラさんのことを思い出していた。

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ミカエラ「あの森の奥には禁止区域と呼ばれる恐ろしい場所があるんだ……決して、あの場所には近づいちゃだめだよ」
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穏やかな彼が見せた、憂いに満ちたあの表情が忘れられない。

その時…―。

??「○○様」

扉がノックされ、城の侍女さんが姿を見せる。

侍女「失礼いたします。ミカエラ王子が、お呼びでございます」

○○「ミカエラさんが?」

思い描いていた人からの呼び出しに、私の胸が小さく鳴った…―。

呼ばれるがまま、彼の部屋を訪れると…―。

(え……?)

彼の部屋は床のあちこちに本や書類が積み重ねられて、さながら物置のようだった。

(こ……これは)

私は部屋の散らかりように一瞬、目を疑ってしまう。

ミカエラ「っ……ごめん、びっくりさせたよね? 僕、執務中とか人の目があるときは頑張れるんだけど……自分の身の回りのことになると、どうも甘くて」

私を部屋に招き入れたミカエラさんは、恥ずかしそうに顔を赤くしている。

○○「意外でした。てっきり公私ともどもきっちりしてる方かと……」

ミカエラ「よく言われるんだ……」

気恥ずかしそうに、ミカエラさんはくしゃりと髪を掻いた。

○○「……」

ミカエラ「○○?」

○○「いえ、なんでもないです」

(ミカエラさんにも、自分に甘いところがあるんだ……)

完璧なイメージの彼の中にも人らしい綻びがあったことを知って、どこか親近感を感じてしまう自分がいる。

私はつい口元に笑みを浮かべて…―。

○○「ひとまず、一緒にお掃除をしましょうか?」

ミカエラ「えっ、手伝わせちゃっていいの?」

○○「もちろんですよ」

ミカエラ「ありがとう……!」

自然な笑みが彼の唇に浮かんで、胸がとくんと跳ねた。

○○「なんだか今日のミカエラさん、いつもと違いますね。 自然体というか……なんて言えばいいんでしょう?」

(これがミカエラさんの素の顔なのかな?)

ミカエラ「そうだよね、君にはプライベートを見せるのは初めてだった。 いつも気を張ってるせいか、執務の時以外はこうなんだよね。 ……変かな?」

○○「そんな……!むしろ素敵です」

ミカエラ「えっ……」

○○「あ……」

無意識に飛び出した言葉に口を押さえる。

(私、何を言って……)

急に恥ずかしくなり、彼を恐る恐る見れば……

ミカエラ「……」

○○「……」

ほんのりと顔を赤くした彼の瞳に、同じく赤い頬をした私の顔が映る。

やがて私達は何がおかしかったのか、小さな笑い声を上げ始めたのだった。

(なんだか、楽しい)

こうして、私達は徐々に打ち解けながら、部屋を片付け始めた。

私は雑然とした部屋から何冊かの本を拾い上げる。

○○「あ、この本――」

ミカエラ「禁止区域に関する書物……」

途端、ミカエラさんの顔が憂いを帯びてしまう。

(またこの表情……一体、禁止区域って何なんだろう)

ミカエラ「……今日君に話をしようと思ったのは、禁止区域に関することなんだ。 ○○には、この国のことをしっかりと知っておいてもらいたくて……」

私の手にしていた書物に手を伸ばしたミカエラさんは、自分を落ちつけるように、大きく深呼吸した。

窓の外は、もう間もなく夕日が沈み、夜を迎えようとしていた…―。

 

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