第2話 黒い翼

審判の国・アルビトロに招待されたある日…―。

この日は美しく澄みきった青空の下、ミカエラさんが街を案内してくれた。

○○「……なんだか荘厳な雰囲気の建物ですね」

ミカエラ「うん、ここの裁判所は審判の国の象徴でもあるから、広大な天の国唯一の司法機関なんだよ」

○○「そうなんですか……」

彼の説明を聞きながら、私は石造りの威風堂々とした建造物を見上げる。

○○「え……でも審判の国は天の国とは別の国なんですよね?」

ミカエラ「その通り」

ミカエラさんの説明によると…―

この国の成り立ちは、天の国で罪を犯した者の裁判機関として始まり、そのうち組織が大きくなり、審判の国として独立したらしい。

ミカエラ「だから、街にも裁判所や司法局といった機関の建物ばかりで、住んでいる人々も少ないんだ。僕達のような審判に関わる王家や役人以外は、その側近や生活に最低限必要な仕組みがあるだけ……さあ、次の場所へ行こうか?」

ミカエラさんは白く綺麗な手を私に差し出したかと思ったら、ふわりと、まさに天使のような柔らかな微笑みを浮かべる。

あまりにも綺麗な笑みにドキリと胸が鳴り、慌てて返事をした。

○○「あ、ありがとうございます……」

少し緊張して、彼の美しい手に自らの手を重ねた時だった…―。

パン屋のおかみ「あいにくあんた達みたいな者に売れるパンは無いんだよ。出てってくれるかい?」

黒い翼を持った男「そんな……、そう言わずにどうか……もう三日も何も口にしてないのです」

通り沿いにある小さなパン屋の入り口で、店主と男の人が揉めている。

男の人の背中には、ミカエラさん達とは違う真っ黒な色の翼が生えていた。

(……黒い翼?)

○○「どうしたんでしょうか……」

ミカエラさんに問いかけると、彼は苦しげに整った眉をひそめた。

ミカエラ「……」

ミカエラさんが一歩踏み出し、私の前に立つ。

ミカエラ「やめなさい、たとえ翼が黒くとも同じ国の民なのですよ」

パン屋のおかみ「こ、これはミカエラ様っ!けれど黒い翼はどうも不吉で……」

パン屋の店主は黒い翼の男の人をちらりと見やった後、店の中に下がってしまった。

ミカエラ「……」

(ミカエラさん、悲しそう……それに、この黒い翼の男の人は一体?)

アルビトロの街行く、白い翼を持つ人達の中……

ただ一人黒い翼を持った男性は、力なくうなだれていた…―。

 

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