審判の国・アルビトロに招待されたある日…―。
この日は美しく澄みきった青空の下、ミカエラさんが街を案内してくれた。
○○「……なんだか荘厳な雰囲気の建物ですね」
ミカエラ「うん、ここの裁判所は審判の国の象徴でもあるから、広大な天の国唯一の司法機関なんだよ」
○○「そうなんですか……」
彼の説明を聞きながら、私は石造りの威風堂々とした建造物を見上げる。
○○「え……でも審判の国は天の国とは別の国なんですよね?」
ミカエラ「その通り」
ミカエラさんの説明によると…―
この国の成り立ちは、天の国で罪を犯した者の裁判機関として始まり、そのうち組織が大きくなり、審判の国として独立したらしい。
ミカエラ「だから、街にも裁判所や司法局といった機関の建物ばかりで、住んでいる人々も少ないんだ。僕達のような審判に関わる王家や役人以外は、その側近や生活に最低限必要な仕組みがあるだけ……さあ、次の場所へ行こうか?」
ミカエラさんは白く綺麗な手を私に差し出したかと思ったら、ふわりと、まさに天使のような柔らかな微笑みを浮かべる。
あまりにも綺麗な笑みにドキリと胸が鳴り、慌てて返事をした。
○○「あ、ありがとうございます……」
少し緊張して、彼の美しい手に自らの手を重ねた時だった…―。
パン屋のおかみ「あいにくあんた達みたいな者に売れるパンは無いんだよ。出てってくれるかい?」
黒い翼を持った男「そんな……、そう言わずにどうか……もう三日も何も口にしてないのです」
通り沿いにある小さなパン屋の入り口で、店主と男の人が揉めている。
男の人の背中には、ミカエラさん達とは違う真っ黒な色の翼が生えていた。
(……黒い翼?)
○○「どうしたんでしょうか……」
ミカエラさんに問いかけると、彼は苦しげに整った眉をひそめた。
ミカエラ「……」
ミカエラさんが一歩踏み出し、私の前に立つ。
ミカエラ「やめなさい、たとえ翼が黒くとも同じ国の民なのですよ」
パン屋のおかみ「こ、これはミカエラ様っ!けれど黒い翼はどうも不吉で……」
パン屋の店主は黒い翼の男の人をちらりと見やった後、店の中に下がってしまった。
ミカエラ「……」
(ミカエラさん、悲しそう……それに、この黒い翼の男の人は一体?)
アルビトロの街行く、白い翼を持つ人達の中……
ただ一人黒い翼を持った男性は、力なくうなだれていた…―。