その夜…―。
夕食後に部屋で休んでいると、ジョシュアさんがメイドさんを伴って訪ねてきた。
〇〇「どうしたんですか?」
ジョシュア「黙ってて」
そう言って、私のクローゼットを勢いよく開いて……
ジョシュア「これは、レディにふさわしいとは言えない。 これも……」
次々と洋服を取り出していくジョシュアさんを、見守ることしかできずにいた。
ジョシュア「そうだな……今着ている服も、適当なものに着替えて」
〇〇「え?」
ジョシュア「早く」
〇〇「は、はい!」
(でも、どれも一人で着られそうにないものばかり)
ジョシュアさんが用意してくれたドレスには、どれもコルセットや細かなボタンがついていた。
(どうしよう)
ジョシュア「ああ、メイドに着替えを手伝ってもらうといい。オレはしばらく出てるから」
〇〇「……はい」
扉から出て行くジョシュアさんの後ろ姿を見送りながら、私は途方にくれてしまう。
(着替えくらいで、メイドさんにご迷惑をかけられない)
クローゼットをしばらく眺めていると、一着、細かなボタンもコルセットもないワンピースを見つけた。
(かわいい。それに、これなら一人で着られるかも)
胸元にリボンをあしらった柔らかな生地に、ふんわりとしたスカート。
私はそのワンピースに着替えた。
〇〇「ジョシュアさん、あの……着替えました」
部屋の外で待つ、ジョシュアさんに声をかけると…―。
メイド「あ……〇〇様……!」
〇〇「え?」
メイドさんが慌てた様子を見せたけれど、私の声にジョシュアさんが入って来た。
彼は驚いたように目を見開き、私は首を傾げた。
ジョシュア「……ペナルティ一つかな」
〇〇「え?」
ジョシュア「レディであるなら、そんな姿を男性に見せてはいけない」
〇〇「そんな姿……?」
ジョシュア「それ、ネグリジェだよ」
〇〇「え……っ!?」
ジョシュア「君のもといた世界では、寝る時にそういうのは着ないのかな」
くすくすと笑いながら、ジョシュアさんは後ろ手に部屋の扉を閉めた。
(だって、これ、ワンピースみたいで……)
頬が熱を持っていくのがわかり、私は彼の顔を見ることができなくなってしまった。
ジョシュア「ネグリジェは、言うなれば素肌同然」
ジョシュアさんは、クローゼットから上着を取り出し、私の肩にかけてくれる。
ジョシュア「次に同じことしたら……変な気を起こされても、文句は言えないからね」
(恥ずかしい……)
かけてもらった上着の前をかき合わせて、私は部屋の隅で縮こまった。
ジョシュア「そうだ。言い忘れてたけど……次からペナルティ取ったらお仕置きだから」
〇〇「えっ?」
(お、お仕置き……!?)
ジョシュア「両手の甲を鞭で叩かれる」
〇〇「……っ」
ジョシュア「この国では、昔からそうやって躾けるんだよ」
(しつけ……?)
ジョシュア「ああ、そうだ。明日のアフタヌーンティーはオレの乳兄弟も同席させるから。 彼は一応身分の高い貴族だし、粗相のないようにね。 お返事は? ペナルティ、欲しい?」
慌てて首を横にふり、なんとか返事をする。
〇〇「は……はい……」
静かな月夜に、胸がドキドキと音を立てていた…―。