その日、夜空に星が輝きはじめた頃…-。
ジョシュア「お似合いですよ」
ジョシュアさんがプレゼントしてくれたドレスに身を包み、私は歓迎パーティーの会場に向かっていた。
(やっぱり、お姫様として接してもらうのって慣れない)
私を恭しくエスコートするジョシュアさんの顔を見上げる。
ジョシュア「ああ……そうでした。 失礼。普通に接するのがお望みでしたね」
そう言って、ジョシュアさんは歩みを止めた。
ジョシュア「○○、緊張してるの?」
○○「え……」
口調を改めてくれたことに驚いて、私は瞳を瞬かせる。
ジョシュア「これでいいんだよね?」
気さくに笑いかけられ、こちらも思わず頬がゆるんだ。
○○「うん、ありがとう」
ジョシュア「よかった」
そう言ってジョシュアさんは、優しく微笑んだ。
ジョシュア「行こう」
そうして扉の前に立つと、扉番の人が重厚な扉を両開きにしてくれる。
扉番「トロイメア王家、○○様、ならびにジョシュア王子のご入場」
着席していた人々が、立ち上がって私達を迎えてくれる。
(わぁ……なんて華やかなパーティー)
私達が側を通ると、きらびやかなドレスの貴婦人方はドレスの裾を持ち上げ、燕尾服の男性は胸に手を当てて会釈をする。
慌てて会釈を返すけれど、自分でもわかるほどにぎこちない。
(緊張する……)
そう思って、身を固くしていると……
ジョシュア「そんなに緊張しなくて大丈夫。ほら、笑って」
そっと私の耳元に囁きかけて、ジョシュアさんが目配せをしてくれた。
(ジョシュアさん、優しいな)
そうして席につくと、間もなくシャンパンがグラスにそそがれる。
ジョシュアさんがグラスを手に立ち上がった。
ジョシュア「皆様、それではトロイメア王家○○姫、歓迎の印に。 乾杯」
ジョシュアさんがグラスを指先で持ち、歓迎のしるしに目線の高さにあげる。
その優雅さに、私は何だか急に自分を恥ずかしく感じた。
(ジョシュアさんって、本当に優しくて優雅)
位置皿が取り去られ、美しく花をあしらった前菜が運ばれてくる。
(それに比べて、私……どのフォークから使っていいかさえ、わからない)
目の前にはたくさんのナイフやフォークが置かれていて、手を伸ばすことさえためらわれていた。
その時、不意に視線を感じて隣を見ると…-。
ジョシュア「……」
(……ジョシュアさん?)
ジョシュアさんの瞳が、私をじっと見据えていた。
その視線に見つめられ、なぜだか動けずにいると……
ジョシュア「簡単だから大丈夫。僕の真似をして」
彼はそうささやきかけてくれ、私に見えるように一番外側のナイフとフォークを手にする。
ジョシュアさんのおかげで、私は何とか食事を始めることができた。
(お姫様って、こういうマナーも必要なんだろうな)
弦楽隊がゆっくりとした音楽で奏で、洗練された人々が上品に食事を口に運ぶ。
きらびやかな世界の中で、私は取り残されたような気持ちを感じていた…-。