第5話 炎の恐怖

翌日…-。

窓から入る風が心地いい。

(焼き過ぎてしまったかな)

小屋で面倒を見ることにした子猫の為に、私は魚を焼いていた。

サイ「な、何してるの!? ○○」

私の様子を見に来たサイさんが、動揺した様子でフライパンを凝視している。

○○「サイさん! 今、子猫にお魚を焼いてい…-」

サイ「危ない!」

○○「え?」

目を離した隙に、少し火力が強くなっていたようだった。

○○「あ、ごめんなさい、気づかなくって」

火力を弱めて彼を見ると、顔色が優れない。

(どうしたのかな?)

○○「顔色悪いみたいですけど……どうしたんですか?」

サイ「……」

サイさんの顔色が急に悪くなり、心配でじっと見つめてしまう。

すると、サイさんがゆっくりと話し始めた。

サイ「……実は、火が苦手」

(火が……?)

○○「そうなんですか……」

サイさんが腕をまくると、そこに……

○○「……!」

ひどい火傷の跡があった。

○○「これ……」

サイ「小さい頃に、ちょっとね。魚は調理師にでもまかせて。怪我したら大変だから」

サイさんが、心配そうな声で私に言った。

○○「えっと……もう焼けたから、大丈夫ですよ。 サイさんも来ますか? あの子、きっと喜びます」

焼き上がった魚を皿に移しながら、気分を変えるように、明るい声で言う。

サイ「……僕はいいよ」

彼は青い顔で、呼吸を整えている。

○○「そうですか……じゃあ、私行きますね」

それ以上無理には誘えず、私はひとり小屋へと向かった。

……

小屋に着いた頃には、すでに星が空を瞬き始めていた。

(遅くなっちゃった……)

魚を持っていつもの小屋に到着すると、その前で少年達が花火で遊んでいた。

少年1「お姉ちゃん! 一緒にやろうよ!」

○○「ちょっと待ってね。子猫にご飯をあげたら…-。 あ……危ないっ!!」

少年1「えっ?」

声を上げたけれど、遅かった。

私に気を取られた少年達が持っている花火が、小屋の隣に積まれていたわらに向けられていた。

乾いたわらに火がついてしまうと、瞬く間に小屋に引火してしまう。

○○「……!」

少年達は驚いて、立ち尽くしている。

○○「離れて!! 早く、水を……!」

少年達が、私の言葉に駆け出していく。

○○「子猫が……いない」

辺りを見回すけれど、どこにもいない。

少年「子猫なら、中に……」

一人残っていた少年が、震える声で教えてくれた。

(この火の中!?)

気がつくと、弾かれたように小屋の中へと駆け出してしまっていた…-。

城の窓を磨いていたメイドが、ふと顔を上げる。

メイド「あら……? 空がなんだか赤い……」

その声に、サイが窓に駆け寄った。

サイ「……小屋の方!?」

○○が、魚を持って小屋へ行った。

サイ「……っ!」

サイは、その場を飛び出した…-。

馬を走らせ、燃え盛る小屋に到着すると…-。

小屋に向かって、少年達がバケツで水をかけていた。

サイ「……っ」

火の勢いに、その場の空気が歪んでいる。

サイ「○○は……!?」

震える体を抑えながら、サイは少年達に尋ねた。

少年「王子さま……お姉ちゃんが中に入って行っちゃった」

少年達は、堰を切ったように泣きだした。

サイ「……!」

○○「どこにいるの!?」

既に、天井にまで火が燃え移り始めていた。

(早く、見つけないと……!)

恐怖ですくみそうになるのをぎゅっとこらえ、私は子猫を探した…-。

 

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