(やっぱり、ここは素敵……)
お花の香りが心地よく、私は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
アルマリ「本当にごめんね、さっき」
アルマリは、申し訳なさそうにまつ毛を伏せる。
○○「ううん、気にしてないよ」
アルマリ「……兄さんのことも、あまり良く思わない人もいて。 確かに、変わった人だからね」
(アルマリ……悲しそう……)
私は首を振り、アルマリの目を見つめた。
○○「私、トルマリさんに会ってみたい」
アルマリ「○○……」
○○「だって、アルマリのお兄さんなんだから、素敵な人に決まってる」
アルマリ「ありがとう、○○」
彼は嬉しそうに目を細めると、ポケットから何かを取り出した。
(何かな……?)
アルマリ「これ……」
アルマリの手から、淡い蒼い光がこぼれ出していく…-。
(綺麗……)
彼が取り出したのは、式典で見たあの美しい宝石だった。
(あ……)
○○「そういえばなんであの時、この力がなくなっちゃったんだろう?」
アルマリ「それは……」
アルマリの頬が、少し赤みを帯びる。
(どうしたのかな……?)
アルマリ「この宝石が持つ意味……知ってる?」
○○「ううん……知らない」
アルマリが、目を優しく細める。
アルマリ「たくさんの意味を持ってるんだ。勇敢、信頼、そして……“純粋”……」
○○「……純粋?」
アルマリ「そう、僕はそれを失ってしまった……。 だからあの時光らなくなってしまったんだと……思う」
(純粋を……失った?)
(どういうことなのかな……?)
わからずにアルマリの顔を覗き込んでしまう。
アルマリ「……僕ね。 ……○○に恋しちゃったんだ」
(……!)
彼の突然の告白に、驚いて声が出なくなってしまう。
アルマリ「今まで、僕の周りにはトルマリしかいなかったんだ。 トルマリが僕しか見えてなかったように……。 僕も、トルマリしか見えてなかったんだと思う」
彼の真剣な表情に、瞳を逸らせなくなってしまう。
アルマリ「でも君に、初めての気持ちを教えてもらったんだ」
○○「……!」
アルマリ「僕……今、すごくドキドキしてる。 ○○に触れたい、近くにいたいなって思うのに……。 でも……そうすればするほど、胸がぎゅっと苦しくなったんだ……」
○○「アルマリ……」
彼の手の中にある宝石は、途切れることなく、光り続けている。
アルマリ「この気持ちの正体がわからなくて……。 でも、これが恋なんだってわかったときに、この力が戻ったんだ」
宝石がより一層に輝きを増していく。
(恋……?)
アルマリは、私の手に宝石を渡した。
○○「……綺麗な光。これが、アルマリの光なんだね」
アルマリ「……宝石に込められている意味は、他にもあるんだ。 この光は……“幸せ”の光。 僕、○○と出会えて、幸せだ」
次の瞬間、アルマリの美しい蒼い瞳が近づいてくる。
そして、優しくそっと私の頬にキスを落とした…-。
○○「……!」
アルマリ「恋をすると、欲張りになるんだね。……もっと、君に触りたい」
彼は照れたように眉を下げて笑い、私の手を強く握りしめてきた。
アルマリ「僕、もう純粋じゃないんだね……。 君のことは……トルマリには、秘密」
(アルマリ……)
悪戯っぽく微笑むアルマリは、出会ったころの彼とは違っていた。
(でも……)
私はそれに戸惑いつつも、彼の温かな手に、美しい瞳に魅了される。
アルマリ「……触れていい?」
小さく頷くと、彼の手が私の頬に添えられた。
そのままアルマリの顔が近づいてきて…-。
○○「……っ」
触れるだけのキスが、唇に落とされる。
すぐに唇が離れると、アルマリは顔を赤くしながら微笑んだ。
アルマリ「僕と……一緒にいて欲しい」
彼の手のひらが、気持ちを確かめるように私の髪や頬に何度も触れる。
その手が触れられるたびに、私の胸がトクントクンと音を立てる。
(アルマリ……)
こみ上げてくる幸せな気持ちがあふれ出すように、私の手の中の宝石が、柔らかい光をいっぱいに放っていた…-。
おわり。