式典が無事に終わり、私たちは城に戻ってきた。
○○「良かった……すごく心配したよ」
アルマリ「そうだよね、ごめん……心配かけて」
アルマリは、目を細めて私を見つめてくる。
その優しい表情に、胸がトクンと跳ねた。
(あれ……私……?)
アルマリ「式典も終わったし、またあの花畑に行こうか」
○○「……う、うん」
そしてお花畑へと向かおうとすると…―。
少し離れた場所から、式典のことを噂する城の人達の声が聞こえてきた。
兵士「アルマリ様、お一人でも大丈夫だったな」
メイド「本当ですね、トルマリ様がいつも先導してらっしゃいましたが」
(皆さん、アルマリのこと褒めてる……)
兵士「トルマリ様は、女装が趣味の変な方だからな。国を継ぐなら、アルマリ様がいいさ」
(えっ……)
メイド「ええ。女装が趣味の国王なんて、他国からの笑い物になりますから」
(そんな……)
隣にいるアルマリを見ると、眉をしかめて、唇をかみしめていた。
かける言葉を見つけられないでいると……
メイド「でも、トルマリ様はすごく可愛いわ。もしかしたら、あのトロイメアのお姫様よりも……。 トロイメアの姫君ってどんな方かと楽しみにしていたのに……普通の街娘のようで」
今度は、噂話の矛先が私に向けられた。
(そうだよね……私、お姫様っぽくないし……)
その時…-。
アルマリ「○○のことを悪く言うな!」
○○「……!」
声を荒げ、アルマリが兵士さんとメイドさんの前に立ちはだかった。
(アルマリ……!)
兵士「ア、アルマリ様……!」
アルマリ「トルマリのことも……そんな風に言わないで欲しい」
アルマリが眉を潜め、顔をうつむかせる。
その表情に、胸が締め付けられる。
アルマリ「行こう、○○」
アルマリが私の手を引いて、その場から歩き出した。
…
……
○○「ア、アルマリ……」
握られた手の力強さに、胸がどきどきと音を立てている。
アルマリ「……」
アルマリは立ち止まり、手を離して私に向き直った。
アルマリ「……ごめん」
○○「き、気にしてないよ、私、本当に普通の人だから……」
自嘲するように笑うと、アルマリが首を振った。
アルマリ「……そんなことない。 ○○は、きらきらしてるよ」
(アルマリ……)
蒼い瞳に、私がしっかりと映し出されている。
○○「……!」
その真っ直ぐで強い瞳の輝きに、胸がトクンと跳ねた…
―。
アルマリ「行こう、○○」
○○「う、うん……!」
(アルマリ、なんだか……変わった?)
アルマリの凛とした雰囲気は、とても精悍で……
私の心の中で、何かが音を立てて弾けていた…-。