アルマリが城に戻ると、執事さんやメイドさん達が一斉に駆け寄ってきた。
執事「アルマリ様、ご無事で嬉しゅうございます!」
メイド「お怪我などはありませんか?」
アルマリは、きょろきょろと慌ただしく視線を動かしている。
(……誰かを、探しているのかな?)
アルマリ「トルマリは……いるかな?」
(トルマリって……さっきも言ってた人だよね?)
○○「ねえ、アルマリ。トルマリさんって……」
アルマリは眉間に皺を寄せて、ふっと小さくため息を吐いた。
アルマリ「僕の、双子のお兄さん。ちょっと心配性なんだ。 僕が眠りに落ちて……大騒ぎにてるんじゃないかな」
アルマリは、ぶっきらぼうに言葉を言い放つ。
(仲が、悪いのかな……?)
アルマリ「……部屋にいるかも」
アルマリと一緒に、トルマリさんの部屋に向かった…-。
トルマリさんの部屋に行くと……
(あれ……?)
部屋中に、レースやフリルのついた色とりどりの可愛い洋服が脱ぎ散らかされている。
アルマリ「ああ、もう兄さん……また服を脱ぎっぱなしで」
(トルマリさんの服? お兄さんなんじゃ……)
ため息を一つ吐くと、アルマリは服を片付け始めた。
○○「アルマリ……これ……お兄さんの服なの?」
アルマリ「……ああ、ごめんね。兄さんちょっと変わってるから」
そう言いながらも、アルマリはトルマリさんの服を丁寧に畳んでいく。
アルマリ「……僕にちょっと構い過ぎなんだけど」
そう言いながらも、アルマリの顔は優しい。
(トルマリさんのことを話すアルマリ……何だか嬉しそう)
(仲悪いのかな? って思ったけど……本当は好きなんだろうな)
アルマリ「これでよし、と。あ……」
アルマリはトルマリさんの服を片付け終えると、突然私の方へと近づいてきた。
(えっ……?)
アルマリ「○○……」
突然、私のスカートにアルマリの手がかかり…-。
○○「……! あああ、あの……アルマリ……!」
スカートの裾を掴まれて、私は思わずアルマリから離れた。
アルマリ「○○?」
アルマリは目を丸くして私の顔を見つめている。
アルマリ「どうしたの?」
○○「どうしたって……!」
(急にスカートを触るから……)
戸惑っていると、アルマリの無邪気な微笑みが向けられる。
アルマリ「スカート、裾がちょっと曲がってるよ……」
(あっ……本当だ……)
彼はその場にしゃがむと、ためらいなくスカートの裾を直してくれる。
アルマリ「髪も……乱れてる」
○○「あっ……」
彼の細長い指が、私の髪の毛をすくう。
(顔が……近い……!)
私は、自分の頬がじわりと熱くなっていくのがわかった。
アルマリ「トルマリにも、いつもこうしてあげるんだ」
○○「ア……アルマリは、トルマリさんととても仲がいいんだね」
アルマリ「……」
(あれ……?)
アルマリの表情が、不意に影が落とされる。
(さっきは、嬉しそうにトルマリさんのこと話してくれたのに)
(アルマリと、トルマリさんの関係って……?)
けれど、アルマリにそれを尋ねることがなぜだかためらわれたのだった…-。