アディエルくんがルシアンさんの使者に呼ばれていった次の日…-。
私が泊まっている宿の部屋までアディエルくんが来てくれた。
アディエル「昨日の埋め合わせだ。花畑に連れていってやるぜ」
○○「……! はい、ありがとうございます」
(あれ……?)
明るく答えたものの、アディエルくんにいつもの元気がない。
(どうかしたのかな?)
蝶が飛び、甘い匂いが風に乗る花畑に来たのに、一向にアディエルくんは元気が出そうにない。
座りこんでしまったアディエルくんの隣に、私も腰をおろした。
○○「……何かあったんですか?」
遠慮がちにそう問いかけると、アディエルくんの憂いを帯びた瞳が私に向けられた。
アディエル「……すげえな、お前。お見通しか。 昨日……ルシアンに呼び出されただろう? あれ、禁止区域にいた子どものことで叱られたんだ」
アディエルくんは、そっと瞳を伏せ、ぼそぼそと独り言のようにつぶやく。
○○「え……?」
アディエル「禁止区域に入るのはよくねえんだけどさ。自分と重ね過ぎて感情的になったからな……」
(……ルシアンさんは、全部わかってるんだ)
アディエル「はぁ……あいつに叱られるのが一番へこむぜ」
大きなため息をついて、アディエルくんは肘を乗せている膝よりも深く頭を下げる。
あまりの落ち込みっぷりに、私まで胸をつまらせてしまった…-。