審判の国・アルビトロ 影の月…-。
目覚めさせた王子に招待されて、私は石畳の街並みが美しい、審判の国・アルビトロへと来ていた。
待ち合わせ場所に来て、立派な礼拝堂の鐘楼を見上げていると……
アディエル「あ、やっと来たか! オレの命の恩人」
明るい声が飛んできて、急いで振り返った。
アディエル「目覚めさせてくれて、本当にありがとな! 絶対にお礼がしたくて呼んじまったけど……長旅だっただろ?」
駆けてきた青年はバサリと羽を震わせながら、私の両手を握り締め、誠実そうな瞳を瞬かせた。
○○「はい、でも大丈夫です」
アディエル「そっか、良かった。あ、改めて……オレはアディエル。お前、名前は? 目覚めた時、焦ってちゃんと話できなかったし……」
アディエルくんが、申し訳なさそうに表情を曇らせる。
○○「○○です」
アディエル「○○……よろしくな!」
○○「はい」
アディエル「あー、それにしても良かったー。恩は返さないといけねえからな!!」
今度は真剣な眼差しで、じっと私を見つめる。
吸い込まれそうなきらめきは、たっぷりと熱を含んでいた。
(実直な人だな)
好感の持てる姿に、どんな人だろうと緊張していた気持ちがすぐに緩む。
アディエル「で、どこに行く? 好きなところに、どこにだって連れていってやるぜ!」
○○「えっと……でも、まだこの国のことを良く知らなくて」
アディエル「あ、そっか。初めてだもんな。そりゃそうだ。悪ぃ、悪ぃ。 そう言えば、さっき鐘楼を眺めてたな。礼拝堂とか巡ってみるか?」
○○「はい、ぜひ」
アディエル「じゃ、決まりだ。オレの友達のルシアンも鐘の音が好きなんだぜ」
○○「ルシアンさん?」
アディエル「すげぇやつなんだ。優しいのに強いからな」
その声色から、ルシアンという人のことをとても尊敬していることが伝わってきた…-。