ーーーーー
アポロ「おかげで、良いことを思いついた」
ーーーーー
それから…ー。
彼に強引に連れられて、向かった先は…
アポロ王子の領から遠く離れた、彼のお父様が住んでいらっしゃるという王宮だった。
(道中、すごく念も押されたし…どういうつもりなんだろう)
アポロ「いいな、貴様は俺が何を言っても、隣で黙っていろ。 返事は、はいだけだ。その他の返事はすべて、笑みで済ませろ。 それから、俺のことはアポロ王子ではなく、アポロと呼べ。わかったな?」
こうして道中の様子を思い出すと、ますます不安が込み上げてくる。
しばらく待たされていると、広間の入り口から、荘厳な装いの男性が供を引き連れ入ってきた。
(あの方が、アポロ王子のお父様かな?)
国王「久しぶりだな、アポロ」
にこりともせずに、お父様…フレアルージュの国王様は、アポロを一瞥して言った。
アポロ「ああ。今日は報らせがあって来た」
国王「報らせ…?」
ニッと、アポロ王子の口角が不適に上がる。
アポロ「この、トロイメアの姫君と婚約した」
○○「っ…!?」
驚きに目を見開きアポロ王子を見ると、鋭く睨みつけられた。
(そ、そうだった、なんでもないふりをしないと…で、でも婚約だなんて!)
国王「…それは、まことか」
アポロ「ああ、婚礼の儀が決まれば、また知らせる」
○○「あ…」
それだけを言うと、アポロ王子は広間から出て行ってしまう。
私は、慌てて一礼し、彼の後を追いかけた…ー。
○○「待ってください!アポロ王子…ー」
呼び止めても、彼はその歩みを止めることはない。
○○「…アポロ!」
王宮へ向かう道すがら教えられたように、呼び捨てにすると、やっと不機嫌な顔が向けられた。
アポロ「…なんだ」
○○「さっきの話です。どうして嘘なんか…」
アポロ「これから結婚すれば嘘にはならない。これでいいか」
○○「よくないです。だって、そんな突然…ー」
アポロ「トロイメアの姫を我が手に抱き込んだとあらば、必ずあいつらは焦って何か企てる。 貴様には、それだけの価値があるということだ。喜べ」
○○「…喜べません」
アポロ「なぜだ」
アポロの声色は、問いかけというよりも詰問に近く感じられた。
アポロ「とにかく俺の言う通りに動けば間違いない。これ以上、ご託を並べるな」
○○「アポロだって、私のことが好きなわけじゃないのに…」
アポロ「…感情なんて必要ない。貴様は俺のために働け。それだけだ」
○○「そんな、勝手な…ー! …っ!!」
反論しようとすると、手首を強い力で掴まれて、
あっという間に背を壁に押し当てられる。
アポロ「黙って俺に従え…!すべてはこの国のためだ。 国を導くため必要なものは、強い力なのだからな」
言い捨てるように言うと、アポロは私を解放して、また大股で歩き始めた。
ーーーーーー
兵士2「何て、横暴な……」
兵士3「恐ろしい…このままだと、いつか俺も…」
ーーーーーー
街の人1「…!」
街の人2「ア、アポロ様」
ーーーーーー
(強い力が、国を導く…)
(本当に、そうなのかな…?)
私は一人、痛む胸を抑えながらその場に立ち尽くしていた…ー。
…
……
その数日後…ー。
アポロはどこにも属していない自治領への遠征を、突然お父様に命じられた。
(アポロはお父様やお兄様の計略だと言っていたけど…)
多くの兵を引き連れ出立する姿に、どうしようもなく不安が押し寄せる。
フレアルージュを照らす燃えるような太陽は、今日はその姿を隠していた…ー。