月9話 砂漠の星

――そうして、私達はシュテルさんの回復を待ち、人々の願いを叶える旅に出た。

砂漠の星に立ち寄ったある日…―。

○○「シュテルさん、あそこに人が見える気が……」

見ると、壊れた飛行機の傍で、男性が手を振っている。

シュテル「旅人か……飛行機が墜落したようだな。よく生きていたものだ」

シュテルさんの後ろについて歩こうとするけれど、砂に足をとられて上手に進むことができない。

シュテル「……ほら」

シュテルさんが手を差し伸べてくれる。

(あったかい……)

その手はもう冷たくなくて、私は嬉しくてたまらなくなる。

けれど、あの日以来一度も笑ってくれないシュテルさんを思うと、気持ちが重く沈んだ。

シュテル「大丈夫ですか?」

シュテルさんが男性に声をかけると、男性は驚いたように目を丸くした。

旅人「おや……あなたは、メテオベール王家のシュテル王子ではありませんか?」

シュテル「何故私の名を?」

旅人「以前あなたに願い、この飛行機を出していただいた者です。 ああ良かった。王子、飛行機が墜落してしまって。 一つ、王子のお力で直してはいただけませんか?」

シュテル「……済まない。もう出来ないんだ」

旅人「出来ないとは?」

シュテル「……力を失った」

消え入るようなシュテルさんの言葉に、男性がまた瞳を丸くする。

(どうしよう……そうだ!)

私は、散らばってしまった飛行機の部品を集めはじめる。

男性「それは、何をなさってるんで?」

○○「直しましょう!」

シュテル「○○……そもそも飛行機は地上の乗り物で、僕達には知識もない」

○○「でも、きっと大切なものなんでしょう? もしかしたら、案外簡単に直るかもしれませんし」

旅人「お嬢さん、あんた……よし、一つやってみましょう」

○○「シュテルさんも早く」

シュテル「……ああ」

夜の砂漠に、次々と流れ星が落ちてくる。

そのきらめきを頼りに、私達は飛行機の部品を集めたのだった…―。

 

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