あまりに透明な静寂が、ひどく耳に痛い…―。
しばらく押し黙っていたシュテルさんが、私の手首を握った。
シュテル「君は、何を願った?」
○○「私はただ、星屑が止まってくれれば……と」
シュテルさんは、瞬き一つせずに私を見つめる。
シュテル「成る程。その結果、僕は力を失ったのか」
(あのままシュテルさんがいなくなるのを見ているなんて、できなかった)
シュテル「僕は、またあの頃に戻るのか?願いを叶える力もない僕なんて……誰が必要としてくれる?」
○○「そんな……!」
シュテル「君に何がわかる?人の願いを叶えることは、僕が生きているたった一つの証だったんだ」
○○「人の願いは……力がなくたって、叶えられます。 無理なことだってあるけど、それでも一生懸命やれば、叶うことだってたくさんあるんです。 シュテルさん、言いましたよね?人の笑顔が好きだって。 その人達が、私が、シュテルさんの前で笑っていたのは…―」
シュテル「僕が星の力を借りて願いを叶えたからだ」
(違う……!)
シュテル「でも、その力はもう消えた」
(違う!!)
シュテルさんは、この上なく澄んだ瞳で私を見据える。
○○「……っ!」
たまらなく悲しくなり、シュテルさんからもらった胸元のネックレスの鎖を、思い切り引いた。
シュテル「……!」
繊細なネックレスの鎖が切れ、床に花の飾りが転がる。
○○「シュテルさん……違うんです」
シュテル「○○……?」
○○「こんなに素敵なものをいただいて、嬉しかったです。 でも、私が一番嬉しかったのは……シュテルさんが、笑ってくれたから。 シュテルさんの笑顔が嬉しかったんです。 枯れない花をあげたいと思ってくれた、その心が……嬉しかったんです」
シュテル「○○……」
シュテルさんが、呆然と私を見つめている。
その光を失った瞳を見て、心の底から、彼の笑顔を恋しく思った。
○○「シュテルさん、もう一度、やってみませんか。 人々の笑顔を、集めてみませんか」
シュテル「だから、それはもう出来ないんだよ」
○○「力がないと、本当にできないか。 人々が、何が嬉しくて笑っていたのか。 確かめにいきませんか」
シュテル「僕は…―。……○○」
シュテルさんは、静かに目を閉じる。
そして、私をそっと抱き寄せて……
シュテル「ありがとう。君は、優しいんだな」
彼の手が優しく私の背を叩く。
痛みに震えていた心が、ゆっくりと熱を取り戻していった…―。