王妃様から、グラッド王子と友達になってほしいと頼まれた後…-。
国王様達の配慮により、グラッド王子との二人きりの晩餐会が始まった。
(緊張する……)
ややうつむきながらテーブルを見やると、そこには、およそ二人分とは思えない量のご馳走が並べられていて……
グラッド「……」
グラッド王子は、先ほどから黙々と食べ物を口に運び続けている。
○○「グラッド王子は、食べるのがお好きなんですね」
声をかけると、グラッド王子の眉がぴくりと動いた。
少しだけ、手を動かすことをやめて……
グラッド「別に。いくらでも食べられる」
そう答えると、またすぐに元のペースに戻り黙々と食事を続けた。
…
……
晩餐会が始まってから、しばらくの後……
○○「あ、あの、何のお料理が好きなんですか?」
グラッド「……別に」
○○「好き嫌いがないってことですか?」
グラッド「食べられるものは何でも食べる。それだけ」
○○「……そうなんですね」
先ほどから何度か話しかけてはいるものの、あまり会話が弾まない。
(どうしよう。話しかけない方がいいのかな……?)
黙々と食べ物を口に運び続けるグラッド王子を前に、私は途方に暮れてしまう。
(もしかすると、私が友達なんて嫌だったのかな……)
そう思いながら、うつむきかけていた時…-。
グラッド「これ、食わないのか」
すらりと長い指が伸び、私の前にあるお皿を持ち上げる。
○○「え……?」
グラッド「いらないなら、もらう」
○○「あ……」
グラッド「いるのか?」
グラッド王子が顔を上げ、私の答えを待つようにこちらを見つめた。
初めて間近で見る瞳に、小さく鼓動が跳ねてしまう。
○○「い、いえ。どうぞ」
グラッド「そうか。ありがと。 あんた、全然食わないんだな」
グラッド王子の印象的な瞳はすぐにそらされ、テーブルの上の食べ物が、再び彼の口に運ばれ始める。
(本当に、食べることが好きなんだ……)
素っ気なくも、どこか憎めないグラッド王子に、私の不安と緊張は、少しずつ消えていったのだった…-。