罪過の国・ヴォタリア 宙の月…-。
グラッド王子のご両親に招待され向かった罪過の国は、異様な雰囲気に包まれた地だった。
(何だか……ちょっと怖い)
罪を犯した人々がその罪を償うための流刑地…-。
罪過の国にある7つの巨大監獄は、それぞれ7つの罪過を犯した罪人を収容しているらしい。
グラッド王子は、そのうちの一つ『暴食』の監獄を管理する王家の王子だった。
暗く静かな城へ通されると、すぐに国王様達とグラッド王子がやってきた。
グラッド「……」
グラッド王子は、初めて会った時と同様、気だるげにぼんやりとしている。
国王「トロイメアの姫君。此度は我が息子を目覚めさせていただき…-」
グラッド「ふああ……」
王妃「これ、グラッド。お前はまた、そのような態度を……」
大きなあくびをするグラッド王子を、王妃様がたしなめる。
グラッド「……眠いし、腹減ったから」
国王「……!」
グラッド王子の様子に、国王様達は困り果てた様子で顔をしかめた。
(グラッド王子っていつもこんな感じなのかな?)
そっと視線を向けると、気だるげなグラッド王子と目が合う。
その深紅の瞳に、言い知れぬ深い業のようなものを感じて、背筋に震えが走った。
王妃「ごめんなさいね、○○さん」
○○「いえ、お気になさらないでください」
王妃「まあ、いい子ね。とっても愛らしい方だし……一つ、お願いを聞いていただけないかしら」
○○「お願い……?」
私が尋ねると、王妃様はため息交じりに口を開く。
王妃「この子、食欲ばかりで全く恋愛事に興味がなくて……○○さん、どうかこの子と仲良くしていただけないかしら」
○○「えっ? で、でも、恋愛って、その……」
王妃「もちろん、いきなり恋人になれとは言わないわ。お友達でいいから……ね?」
グラッド「……何だそれ。必要ねえよ」
○○「っ……」
こちらを見据えたグラッド王子の瞳は、ひどく鋭敏で……
私の背中に、再び小さな震えが走ったのだった…-。