月7話 恐れる嫉妬

ウェディくんと私の仲が、すっかりぎこちなくなってしまって数日…―。

私がこの国を去らなければいけない日が、明日へと迫っていた。

(あれから一度も、ウェディくんとまともに話をしてない)

(このままじゃ、何もわからないまま……?)

すぐそこに迫った未来を想像して、胸元で手を握りしめる。

(やっぱり、この国を出る前にもう一度話をしよう)

私は荷造りをしていた手を止めると、しっかりと頷いたのだった。

翌日…―。

私は城を出る前に、彼の部屋へと訪れた。

〇〇「ウェディくん、いる?」

ノックをして、扉の前で待っていると…―。

ウェディ「……入れよ。鍵なら開いてる」

部屋の中から、ぶっきらぼうな声が聞こえた後、私はそっと扉を開け、彼の部屋に足を踏み入れた。

ウェディ「……」

ウェディくんは、足を組んで椅子に腰かけ、窓の外をじっと見つめていた。

苛立っているのか、時折指先でひじ掛けを叩いている。

(やっぱり目も合わせてもらえない。話をするのも難しいのかな……)

(でも……)

私は、なおも窓の外を見つめる彼に、意を決して話しかける。

〇〇「あの、私……今夜、帰るから…―」

ウェディ「!!」

彼は突然椅子から立ち上がり、悲しそうな顔で私を見つめ……

ウェディ「なんだよ、今夜って!急すぎるだろ……」

〇〇「ごめんね。最近ずっとすれ違ってばかりだったから、言い出せなくて……。 けど、最後にこうして話せて…―」

ウェディ「……うるせェ……」

〇〇「……っ」

ウェディくんから出たとは思えない、地を這うような声が聞こえた。

彼の足元からは、この間のように紫色の霧がうっすらと立ち上っている。

ウェディ「いきなり訪ねてきたかと思えば、帰るだの、最後だの……。 意味わかんねェよ!なんでそんなことわざわざオレに言いにくるんだよ!? お前なんて……もう勝手にどこにでも行っちまえっ!!」

〇〇「えっ、ウェディくん!?」

彼は大声で叫ぶなり、私を部屋から追い出した。

(そんな……)

大きな音を立てて閉められた扉は、彼からの拒絶のようで、胸が苦しくなるのだった…―。

一方、その頃…―。

ウェディ「なんで……なんでなんだよ……っ!!」

ウェディは苛立ち、椅子を蹴り飛ばす。

ウェディ「どうしてこんなに好きなのに……っ、〇〇のことを考えると苦しくなるんだよ……! それに、セロのことを考えれば考えるほど、醜い気持ちでいっぱいになる……。 そのせいでオレ……〇〇に酷いことばかり……!」

ウェディは頭を抱えるようにして、自らの体を抱きしめる。

まるで、何か恐ろしいものを封じるかのように…―。

ウェディ「このままじゃ、オレはまた…―」

そうつぶやいた後、ウェディは窓の外を見つめる。

ヴォタリアの空には相変わらず、濃い雲が垂れ込めていた…―。

 

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