ウェディくんと私の仲が、すっかりぎこちなくなってしまって数日…―。
私がこの国を去らなければいけない日が、明日へと迫っていた。
(あれから一度も、ウェディくんとまともに話をしてない)
(このままじゃ、何もわからないまま……?)
すぐそこに迫った未来を想像して、胸元で手を握りしめる。
(やっぱり、この国を出る前にもう一度話をしよう)
私は荷造りをしていた手を止めると、しっかりと頷いたのだった。
翌日…―。
私は城を出る前に、彼の部屋へと訪れた。
〇〇「ウェディくん、いる?」
ノックをして、扉の前で待っていると…―。
ウェディ「……入れよ。鍵なら開いてる」
部屋の中から、ぶっきらぼうな声が聞こえた後、私はそっと扉を開け、彼の部屋に足を踏み入れた。
ウェディ「……」
ウェディくんは、足を組んで椅子に腰かけ、窓の外をじっと見つめていた。
苛立っているのか、時折指先でひじ掛けを叩いている。
(やっぱり目も合わせてもらえない。話をするのも難しいのかな……)
(でも……)
私は、なおも窓の外を見つめる彼に、意を決して話しかける。
〇〇「あの、私……今夜、帰るから…―」
ウェディ「!!」
彼は突然椅子から立ち上がり、悲しそうな顔で私を見つめ……
ウェディ「なんだよ、今夜って!急すぎるだろ……」
〇〇「ごめんね。最近ずっとすれ違ってばかりだったから、言い出せなくて……。 けど、最後にこうして話せて…―」
ウェディ「……うるせェ……」
〇〇「……っ」
ウェディくんから出たとは思えない、地を這うような声が聞こえた。
彼の足元からは、この間のように紫色の霧がうっすらと立ち上っている。
ウェディ「いきなり訪ねてきたかと思えば、帰るだの、最後だの……。 意味わかんねェよ!なんでそんなことわざわざオレに言いにくるんだよ!? お前なんて……もう勝手にどこにでも行っちまえっ!!」
〇〇「えっ、ウェディくん!?」
彼は大声で叫ぶなり、私を部屋から追い出した。
(そんな……)
大きな音を立てて閉められた扉は、彼からの拒絶のようで、胸が苦しくなるのだった…―。
…
一方、その頃…―。
ウェディ「なんで……なんでなんだよ……っ!!」
ウェディは苛立ち、椅子を蹴り飛ばす。
ウェディ「どうしてこんなに好きなのに……っ、〇〇のことを考えると苦しくなるんだよ……! それに、セロのことを考えれば考えるほど、醜い気持ちでいっぱいになる……。 そのせいでオレ……〇〇に酷いことばかり……!」
ウェディは頭を抱えるようにして、自らの体を抱きしめる。
まるで、何か恐ろしいものを封じるかのように…―。
ウェディ「このままじゃ、オレはまた…―」
そうつぶやいた後、ウェディは窓の外を見つめる。
ヴォタリアの空には相変わらず、濃い雲が垂れ込めていた…―。