ウェディくんが、セロさんを殴ってしまってから一夜が明けた。
ヴォタリアの城の窓から眺める空は、相変わらずの曇りも模様で……
まるで、どんよりとした私の心を映し出しているようだった。
ー----
セロ「返事はすぐじゃなくていい。3日後の夕方、この場所で聞かせてほしい」
ー----
(帰り際に、セロさんはああ言ってたけど……)
ウェディ「あ……あぁ、オ、オレ……なんでこんなこと……。 これは……この胸の内側から溢れてくるぐちゃぐちゃの感情は……」
(ウェディくん、すごく混乱してたけど、大丈夫かな……?)
走り去っていった時のウェディくんの姿が、忘れられない。
(やっぱり心配だな。少し様子を見に行った方が……)
そう思い立った私が、部屋を出ると……
執事「これは○○様。お出かけですか?」
扉の前を通りがかった執事さんが、にこやかに声をかけてくれる。
○○「はい。ちょっと、ウェディくんのところに……」
執事「左様でごさいますか。ですが、あいにくウェディ様はお出かけになられておりまして……。 恐らく、街の方にいらっしゃるかと思いますが……」
○○「そうなんですね。それじゃあ私も、街の方に行ってみようと思います」
私は執事さんに一礼をした後、ヴォタリアの街へと向かった。
…
……
ヴォタリアの街にやってきた私は、早速ウェディくんを探し始める。
けれども、街は相変わらず薄暗く……
(やっぱり、一人で街中を歩くのは、少し怖いかも……)
私はそう思うながらも、ウェディくんの姿を探し求める。
そうして、しばらくの後……
ウェディ「……○○?どうしてここに……?」
ウェディくんは、以前私を案内してくれた石碑の前に佇んでいた。
そんな彼に、私が歩み寄ろうとした次の瞬間…―。
ウェディ「来るんじゃねェ!」
○○「……っ!」
彼の口から飛び出した拒絶の言葉に、体がびくっと震えてしまう。
ウェディ「……悪ィ。 だけど……もう、嫌なんだよ……こんな感情……っ!」
○○「え……?」
私は、苦しげに顔を歪める彼を見つめる。
ウェディ「オレは、お前を見てると……。 胸の中がぐるぐるして、苦しくて辛くて、でも嬉しくて……。 なのに時々、今まで感じだどんな感情よりドス黒いものが噴き出てくる……こんなのオレは嫌だ!! こんなに辛いなら……お前のこと好きになんてなりたくなかった!」
○○「……!」
(好き……?ウェディくんが、私を……?)
その瞬間、鼓動が大きく高鳴り……切なげに叫ぶ彼の姿を思い返すと、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
そして……
○○「ウェディくん……」
ウェディ「……!や、やめろよ!来るんじゃねェって言ってんだろ!」
ウェディくんは、なおも拒絶の言葉をぶつけてくるものの、私はそれに構うことなく、彼の震える拳で包み込んだ。
すると……
ウェディ「あ……」
ウェディくんは小さく声を上げたものの、私の手を振り払うことはなく……
彼の拳の震えは、少しずつ治まっていった。
そうして、しばらくの後…―。
ウェディ「……○○っ!」
○○「……!」
彼の腕が、痛いほど強い力で私を抱きしめ……その瞬間、私の心臓は再び大きく跳ね上がった。
ウェディ「好きだ……。 でも、どうしたらいいんだよ……。 お前が好きだからって、友だちを傷つけたりするなんて……オレ、最低じゃねェか。 そんなの嫌だ……嫌なんだよ……」
彼の真っ直ぐな気持ちが、胸に突き刺さるようで……私はそれきり、何も言えなくなってしまった…―。