ウェディくんにヴォタリアの街を案内してもらった翌日…―。
ストリートバスケの大会があるというウェディくんに手を引かれ、私は街の公園へとやっときた。
セロ「ウェディ、遅かっ…―」
セロさんと目が合った次の瞬間、彼の目は嬉しそうに細められた。
セロ「○○さんも一緒か。ウェディ、今日は敵同士だけど頑張ろうな」
ウェディ「……」
ウェディくんは、セロさんから握手を求められるものの、その手を取ることなく首を傾げ……
ウェディ「何でテメェが、○○を見て笑うんだ?」
セロ「えっ?いや、別に……」
ウェディくんとセロさんの間に、微妙な空気が漂う。すると……
ウェディの友達「おーい、そろそろ始めるぞ。全員、集合ー!」
ウェディ「……」
ウェディくんは、まだ納得がいかなそうな顔をしていたものの、コートの中央へと向かい……
しばらくすると、審判の笛の音が鳴って試合が始まった。
…
……
数試合が終わった後、勝ち上がったウェディくんのチームとセロさんのチームで、決勝戦が行われることになった。
そうして、試合開始の笛の音と共に私は…―。
○○「皆さん、がんばってください!」
私が声援を送った瞬間、ボールを手にしたウェディくんが大きな声を張り上げる。
ウェディ「皆って何だよ!○○はオレのことを応援しろっての!」
○○「もちろん、ウェディくんのことも応援してるよ」
ウェディ「だから違うって!皆じゃなくて……」
そう叫びながら、彼は早くも最初のゴールを成功させた。
試合がそのまま進み、一度目のインターバルに入る。
○○「はい、皆さん、スポーツドリンクです」
私は、コートから戻ってきた皆にボトルを差し出す。
けれども……
ウェディ「おい、ストップストーップ!」
セロ「え?」
ウェディ「○○のボトルはオレが先に受け取るって決まってんの。 お前もオレ以外の男に優しくするなよな……」
○○「え……?ど、どうして?」
ウェディ「あ!?どうしてもこうもないだろ、特にセロには優しくしなくていいっ」
○○「え……」
私は、子どもっぽいことを言う彼に困ったように笑いながらボトルを差し出す。
すると……
ウェディ「へへ、ありがとな」
怒った顔が、途端に笑顔になる。
(なんだかウェディくんって……)
疑問が浮かび始める中、インターバルが終わって試合が再開した。
そして……
一進一退を繰り返したゲームは、ウェディくんのチームの勝利で幕を閉じたのだった。
…
……
夕日が街の建物という建物を赤く染める。
ウェディ「……いいか、お前は○○に近づくな!」
セロ「えーと……」
試合が終わってからというもの、何故かウェディくんはすっかりセロさんを警戒していた。
(どうしたんだろう)
私がそっとウェディくんの方を見ると、彼は一瞬嬉しそうにするものの……
再び、セロさんに警戒心を剥き出しにした視線を向ける。
(これって……?)
二人の間に漂う微妙な空気を、どうにかできないか思案するものの……
答えが出ないまま、私は滞在期間中にお世話になっているヴォタリアの城へと戻ったのだった…―。