どこか不気味な街に響く、賑やかな声…―。
そこで私の目に飛び込んできたのは、ストリートバスケのコートでダンクシュートを決める、ウェディくんの姿だった。
(すごい……今のウェディくん、私の背より高く飛んで……)
驚きに言葉を失っていると、ウェディくんと目が合った。
ウェディ「あーっ○○!!本当に来てくれたのか!?」
喜びを全身で表しながら、彼が私の方へ駆けてくる。
ウェディ「よく来てくれたなぁ!めちゃくちゃ嬉しいっ!! 途中で道に迷ったりしなかったか?街中とか怖くなかったか!?」
すぐさま彼がマシンガンのように言葉を吐き出す。
背後に垂れ下がった尻尾まで嬉しそうに揺れ動いているのがわかりやすい。
(こんなに歓迎してくれると、なんだか嬉しくなってくるな……」
○○「心配してくれてありがとう」
笑顔につられて自然と笑みをこぼすと、彼の頬が赤くなる。
ウェディの友達1「おいおい、コイツ何を赤くなってんだ?」
ウェディの友達2「もしかしてウェディくんの彼女!?」
ウェディ「バっ!そんなんじゃねェ!!テメェら失礼なこと言うな!!」
左右からバスケの仲間にからかわれて、ウェディくんの顔がさらに赤くなる。
ウェディ「ほんとゴメン!!○○、コイツらその……ほら、オレの国、柄が悪いヤツ多いから。 けどみんなすごくいいヤツなんだ、オレの大切な友達!」
輪の中心でそんなことを言うウェディくんの頭を、仲間達がガシガシと撫でる。
(ウェディくんって友達が多いんだな……でも、わかる気がする)
(表裏がなさそうで、見てるとこっちまで元気になれそう)
ウェディ「そうだ、コイツら紹介してやるよ、オレ、ストリートバスケが好きでさ。 おーい、セロ、お前もちょっとこっち来い!」
ウェディくんがそう言うと、ゴール付近から一人の青年が駆けてきた。
ウェディ「コイツはセロ、オレのチームの……なんかサブリーダー的な感じ?」
セロ「……こんにちは」
ウェディの友達1「的な、って何だよ。もうちょっとちゃんと紹介しろっての!」
仲間の一人が、ウェディくんの頭を笑いながら小突く。
けれども…―。
セロ「…………」
(なんだろう……セロさん、私のこと、すごく見てる?)
ウェディ「よし!試合が終わったら街を案内してやるから、ちょっと待ってろよ」
視線が気になったものの、私は……
○○「試合、がんばってね」
ウェディ「ん!?もちろん! ……なんか、その……」
彼はかすかに視線を逸らして赤くなった耳たぶを指先でいじる。
ウェディ「お前に応援されると、すごく嬉しいなっ!」
ウェディくんは、仲間と共にコートへと戻っていく。すると、その時……
セロ「……」
(……? セロさん?)
去り際に、セロさんの視線が一瞬だけこちらに向けられた気がしたのだった…―。