罪過の国・ヴォタリア 宙の月…―。
その王子様が目覚めたのは、闇の濃い夜のことだった。
??「うぅ……お前が俺を目覚めさせたのか……?」
目覚めたばかりの王子の目が私を映した瞬間、星一つ見えない夜の中で流れ星のように瞬いた。
??「すげェ……マジで可愛い、まぶし過ぎる……」
○○「え!?」
??「あっ、いきなり悪ィ!オレはウェディ。罪過の国の王子だ」
ウェディ「お前、今度オレの国に来てくれよ!お礼するから!!」
○○「は、はい」
立ち上がるなり、彼は私の手を力強く握った。
ウェディ「よし、約束したからな!必ず来いよ?絶対だぞ!!なっ!」
彼は握った手を大きく振りながら、輝く瞳で何度も繰り返す。その勢いに、私はすっかり気を呑まれてしまっていた。
そんな出会いから、一週間…―。
私は彼との約束通り、罪過の国を訪れた。
(ここがウェディくんの国?少し怖いな……)
ヴォタリアは、罪人を収容する監獄がある国だと聞いている。
その暗いイメージの通り、街は昼間でも深い霧に包まれていた。
不気味なものを感じて、心細い気持ちで歩いていると…―。
??「パス!よこせよ!パス!!」
??「よし、頼むぜウェディっ!!」
(今の声は?それに、ウェディって……)
街の雰囲気には似つかわしくない、楽しげな声が聞こえてきた方へと向かう。
すると……
○○「!!」
その瞬間、男の人の影が私の身長よりずっと高く跳び上がった。
(嘘、あんなに高く!?)
ウェディ「うらぁっ!ゴールッ!!」
その声で、私はようやく状況を理解する。
そこはストリートバスケのコートで、今しがたダンクシュートを決めたのは、私をこの国に招待したウェディくん、その人なのだった…―。