第3話 アヴァロン城へ

聖剣と聖盾をジークさんと一緒に見に行く約束をした私は、競技会の小休止に、彼とアヴァロン城を訪れていた。

〇〇「あの人だかりはなんでしょうか?」

回路の先に見える大広間に、何やら人垣ができている。

ジーク「あれは……どうやらアヴァロンの二人の王子達のようですね。 競技会の行われる間は、大規模なモンスター討伐遠征はないと聞いています」

そう語り、ジークさんは太陽の昇る空を回路から眺める。

ジーク「ちょうど正午あたりですから、お二人の受け継ぐ聖剣と聖盾のお披露目が始まったのでしょう」

〇〇「それで、あんなに人が」

人垣の方へ進めば、集まった人々の声が漏れ聞こえてきた。

観客1「ああ、なんて素晴らしい輝きなんだろう!」

観客2「本当に素敵な宝剣ですこと。それにお二人の王子も凛々しくて……」

賞賛の声が聞こえる中、ジークさんが私に手を差し出した。

ジーク「プリンセス、私達も参りましょう」

(ジークさんって、すごく自然に私をエスコートしてくれる)

(あまりに自然すぎるから、それが当然のように思えてくるけど……)

〇〇「はい、ジークさん」

私は彼ににっこりと笑いかけてから、やがてその手に自分の手を重ねた。

ジーク「どういたしましたか、プリンセス?」

〇〇「いいえ、なんでもありません、行きましょう」

ジーク「はい、仰せのままに」

人々の列の後ろにつくと、やがて私達の番がやってきた。

〇〇「……! なんて綺麗……」

ジーク「ええ、本当に……」

二人の王子が持つ伝説の武具は、剣も盾も神々しい輝きを放っていた。

見ているとその美しさと神秘さに、呑み込まれてしまいそうになる。

ジーク「……」

(ジークさん、あんなにかしこまって……)

神聖なる武具を敬ってか、彼は胸元に手を当てて、敬意の礼を取っていた。

その眼差しは、その場にいる誰よりも真剣に見える。

――その時だった。

闘技場の方から、地響きのような轟音が聞こえ、足元がかすかに揺れた気がした。

〇〇「っ!?」

ジーク「今のは?」

やにわにその場に集まった人々が騒ぎ出し、右往左往し始める。

〇〇「あっ……」

混乱の中、誰かに背中を強く押されて倒れかけてしまう。

ジーク「危ないっ、プリンセス!」

力強い腕が、私をしっかりと受け止めてくれた。

ジーク「お怪我はありませんでしたか?」

〇〇「あ、ジーク……さん」

周りの人達から私を守るように抱き寄せ、ジークさんは私を見下ろす。

突然のことに、私はしばらくその視線を受け止めていたけれど……

彼との距離が近くて、頬が熱くなった。

(いけない、今は……)

ふと視線を彼から広間に移せば…―。

近衛兵団隊長「大変です、王子! 闘技場で問題が……」

その伝令を聞いて、二人の王子達は近衛兵に指示を飛ばして、闘技場の方へ駆け出していく。

近衛兵1「ご観覧の皆様は、安全が確保されるまでこの場で待機ください!」

近衛兵2「この場は絶対に安全です! どうか冷静な行動を!」

近衛兵団の素早い対応で、混乱する人々は広間の中央にまとめられた。

〇〇「一体、この騒ぎは?」

ジーク「…………」

ジークさんの険しい顔を見て、私は…-。

(怖い……何が起こったんだろう?)

無意識のうちに、私はジークさんの腕に縋りついていた。

ジーク「大丈夫です、プリンセスには私がついております」

不安に震える肩を、彼の大きな手が支えてくれる。

大地が揺れるほどの地響きが、すぐそこまで迫っているような気がした…-。

 

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