月5話 アトラクションの演出?

動き始めたローラーコースターは、素晴らしい物語を目の前に繰り広げながら、早速、急斜面をゆっくりと登り始めた。

(緊張してきた……)

絶叫アトラクション特有の高ぶりが、胸中に広がる。

ジェット「こっからが本番だな」

ジェットさんが嬉々としてそう言った時だった。

がくん、と音を立てて、ジェットコースターが停止する。

ジェット「あれ……?」

〇〇「っ……」

(どういうこと……?)

最前列に座る私の耳に、後ろの席に乗ったお客さん達のざわめきが届き始める。

乗客1「何が起こったの?」

乗客2「これもアトラクションの演出?」

乗客3「故障なんじゃないか?」

しばらくたっても、コースターが動き出す気配はない。

ジェット「試運転で、ちゃんと確認したはずなのに……」

さっきまでの楽しげな表情が一転、ジェットさんは悔しげに表情を歪めていて……

〇〇「あの…―」

乗客1「やだ……怖い!」

乗客2「こんな角度で止まって、どうすりゃいいんだ!」

混乱し始めたのか、お客さん達のざわめきが大きくなっていく。

(どうしよう……!)

不安を覚え、隣にいるジェットさんを思わず見てしまうと……

ジェット「……」

彼の表情は、何かを決意したように凛々しく引きしめられていたのだった…-。

 

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