第3話 ケロタ大活躍

雨露を乗せた木々の葉が、陽の光を受けてきらきらと輝く。

ビッキー「雨も上がったし、そろそろ行こうか」

○○「どこへ行くんですか?」

ケロタ「この近くの村だよ。○○も来るか?」

ビッキー「村に古くから伝わる歌が、この世のものとは思えないほど美しいって聞いたんだ」

○○「綺麗な歌……聴いてみたいです」

思わずそう言うと、ビッキーさんが優しく笑いかけてくれる。

ビッキー「じゃ、一緒に行こう」

ケロタ「よし、決まりだ! 今度こそ“至福のメロディー”だといいな~」

ビッキー「さて、村はこっちかな?」

ビッキーさんは、地図を片手に暗く恐ろしげな雰囲気の森の方を指差した。

ケロタ「……オマエ、黙ってろ。地図をよこせ。 毎度そうやって変な道を……ホラ見ろ! まるっきり反対方向じゃねーか!」

ビッキー「ははっ、そうだったか」

ケロタ「オマエ、しっかりしろよ! いつかジャングルで虎とかに食べられるぞ」

ビッキー「そう? ケロタがいるから、大丈夫だよ」

ケロタ「……ふんっ」

(やっぱり、仲良しなんだな……)

賑やかに言い合う二人の横を歩いていくと、美しい湖に行き当たる。

湖畔に小さな家々が立ち並び、人々の賑やかな声がした。

○○「綺麗な村ですね」

ビッキー「うん。湖も綺麗だし、気持ちのいいところだな」

のんびりと歩いていると、旅人が珍しいのか、村人達が集まってくる。

村人1「珍しい服だな。どこから来たんだ?」

村人2「疲れてないか? 俺の母ちゃんのスープは美味いぞ」

気さくに話しかけてくる優しそうな人々に、ビッキーさんが笑顔で答えている。

ビッキー「実は、この村に伝わる歌を聴きに来たんです。 この世のものとは思えないほど美しい歌だと聞いたんですが、どこに行けば聴けますか?」

村人3「ああ……あれは婚礼歌だからなあ。ハイハイって聴かせられるような代物じゃ…―」

ケロタ「そこをなんとか!」

ケロタがしゃべると、村の人々が静まり返る。

ケロタ「頼むよ! 遠くから来たんだぜ~」

村人1「カエルが……しゃべった?」

村人2「妖怪か!?」

人々は大きくざわめき、ケロタを取り巻いた。

ケロタ「やめろ~! おいビッキー、オマエ何笑ってんだ! 助けろ~」

村人達にツンツンとつつかれて、ケロタがビッキーさんに助けを求める。

ビッキー「ケロタはどこに行っても人気者だな。ねえ、○○」

ビッキーさんはくすくすと笑い、私に意味あり気な視線を送った。

(え……?)

(あ、もしかして)

○○「はい! ケロタ、すごいなあ~」

慌てて同意をすると、ビッキーさんが満足げに笑う。

ケロタ「……そうかなあ。じゃ、ちょっとやっちゃおうかなあ!」

ケロタは、満更でもなさそうにふんぞり返る。

ケロタ「集まって集まって! では、始めます。ケロタ劇場~! 巨人の国で出会った女のトロールの真似っ。 こんな美女を前にして、妖怪なんて失礼ねえ。 アルストリアの城で聞いたファンファーレ。 ♪♪♪ 次は美女ガエルがワシに惚れた時の声っ。 ゲエロっゲロっ」

ケロタの周りの人だかりは、どんどん大きくなっていく。

○○「ケロタ、すごい……! あんなことができるなんて!」

ビッキー「うん。ケロタにはかなわないんだ。 ケロタのおかげで、いつも楽しい」

ビッキーさんは、優しく目を細めた。

ケロタ「おいビッキー! 明日結婚式の余興の頼まれたぞ! 例の歌が聴ける!」

人垣の中から、ケロタの声がする。

ビッキー「……ね? ケロタには、かなわない」

(すごい……)

二人で顔を見合わせて笑う。

きらきらと輝く湖が、彼の後ろで優しくさざめいていた…―。

 

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