柔らかな雨が降る昼下がり…―。
(……カエル?)
森へと向かう道を散歩していた私は、王冠をつけた小さなカエルに道を阻まれていた。
先へ進もうとしても、カエルは私の周りを跳びまわって別の方向へ誘導するような仕草をする。
(こっちに来てってことかな?)
不思議に思ってそちらへ進んでみると、カエルは何度も後ろを振り返りながら私の先を跳んでいく。
○○「どこまで行くの?」
随分歩いた頃、ふとカエルが立ち止まった。
そこにあったのは……
○○「王族の指輪……! ここに私を案内してくれたの?」
カエルは私に向かって手を合わせるような仕草をする。
急いで祈りを込めると、指輪がまばゆい光を放った。
??「……あれ? 僕、ユメクイにやられたんじゃ……」
指輪から解放された王子様に、カエルが勢いよく飛びつく。
??「バカビッキー!!」
(カエルが、しゃべった!?)
涙を浮かべていたカエルは、ふと咳払いをすると、しかめっ面をして王子様の肩に跳び乗った。
??「オマエ、ワシに感謝しろよ。ワシがいないと何もできない奴め!」
ビッキー「ケロタが助けてくれたのかい?」
ケロタ「この姫さんな! 噂のトロイメアの姫さんだろ? 偶然通りかかるなんてオマエ悪運だけは強いな~」
(通りかかったというか……)
ビッキー「そう、ありがとう。僕はビッキー。鳴音の国・リビットの王子だ」
驚いて何も言えずにいると、ビッキーさんが私の顔の前で手を振った。
ビッキー「大丈夫?」
○○「あ……はい。私、○○と言います。」
ビッキー「それで、こっちは…―」
ケロタ「ワシの名はケッツェル・ダ・ローデリッヒ・タリ! 訳あってコイツを呪って…―」
(呪い?)
ビッキー「略してケロタ」
ケロタ「言うな! カエルの国の正統なる王子、ケッツェル・ダ…―」
ビッキー「よろしく、○○」
ケロタ「オマエ……!」
目の前で繰り広げられる光景を、不思議な気持で眺める。
二人の声に混じる雨音は、どこか楽しそうに聴こえた…―。