第6話 胸の痛み

シャオさんの舞の後も、オンディーヌの宮司さんが奉納の詞を精霊に捧げたりと、奉納の儀はしめやかに行われた。

そして……

儀式がすべて終わる頃には、すっかり辺りは暗くなっていた…―。

私は暗くなったオンディーヌの街をひとりで歩いて城に戻った。

沈んだ気持ちは、戻らないまま……

城の回廊から見える暗い中庭に目を向けて、ため息をひとつ吐く。

その時だった。

シャオ「……○○さん!城に戻ってきてたんですね。 良かった、湖に姿がないから心配したんですよ」

○○「シャオさん……」

浮かない気持ちのまま顔を上げると、唇の端を歪め、怪訝な顔をしたシャオさんと目が合った。

シャオ「……どうかしたのですか?」

○○「えっ……いえ、何も……」

シャオさんの顔を、正面から見ることができない。

(こうやって話をしている時は、いつも近くに感じてたはずなのに)

(今は、すごく遠く感じる……)

胸の痛みを隠すように、私はうつむいた。

○○「あの……湖での舞、とても素敵でした……。 じゃあ、もう夜も遅いので私はこれで」

シャオ「え?○○さん、待って――」

彼に背を向けて、走り出す。

だけど…―。

シャオ「待ってくださいと言ったでしょう!」

○○「あ……っ」

腕を捕まれて、シャオさんを振り返る。

(どうして……?)

シャオさんの顔はどこか怒っているように見えた。

私の腕を掴んだまま離そうとしないシャオさんに……

○○「い、痛いです、シャオさんっ」

シャオ「っ、ごめんなさい!でも…―」

力こそ緩められたものの、彼は私の腕を離さない。

シャオ「どうして今夜はそんなによそよそしいのですか……?」

シャオさんは唇を引き歪める。

○○「なんでもありません……」

シャオ「なんでもなくはないでしょう!」

○○「少し具合が悪いだけですから……」

シャオ「体調が……大丈夫なんですか?」

○○「ご……ごめんなさいっ!」

シャオ「……っ!」

腕を掴む力が不意に緩められて、私はシャオさんの手から逃れると、そのまま走り去ってしまった…―。

 

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