第5話 二人でお散歩

数日後…-。

一年を冬に包まれるスノウフィリアにしては、天気が良い日が続いている。

シュニー君が街に出たいと言うので、私は彼のお付きとして一緒に出掛けることになった。

(シュニー君と一緒にいるのは、楽しいけど……)

(いつまでも、召使いとしてここにいるわけにいかないよね)

ー----

侍女『それにシュニー王子は一度言い出したら、兄のフロスト様の言うことでないと聞かず。 フロスト様は、もう間もなく戻られます。それまで、スノウフィリアにいていただけないでしょうか』

ー----

(フロストさんは、いつ帰られるんだろう)

そんなことを考えていると…ー。

シュニー「おい」

前を歩くシュニー君が振り返り、左手を腰に当てながら私を眺める。

シュニー「ぼうっとしてるんじゃない」

○○「ごめんなさい。何か欲しい物でもあるんですか?」

シュニー「魔導書が欲しいけれど、それよりも散歩かな、お前と街を歩くのも悪くないからね」

○○「私と……?」

シュニー「うん。僕の召使いとしても板についてきたし、このあたりでお披露目ってところ」

(召使いとして、お披露目……)

返事に困り、曖昧な笑顔を向ける。

シュニー「愛想笑いするなよ、もっと普段僕といる時みたいな顔をして。 不細工な顔の召使いをはべらせてるなんて、僕の品位に関わるからね」

辛辣なことを言うシュニー君に私は……

○○「これでいいですか?」

シュニー君に向かって、にっこりと口角を上げる。

シュニー「そう、お前は笑えば可愛いんだから、僕を見習ってもっと自信を持たなきゃ。 さ、街を見に行くよ」

○○「あっ、待って…ー」

シュニー「待てない」

シュニー君が私の手を取り広場の方へ駆け出す。

(こういうところは、可愛いんだけどな)

そんなことを思いながら私は彼について走り出した。

……

広場は休日だけの古書市が開かれており、私はシュニー君のお使いで魔導書を探すことになった。

○○「ええと、青の書……青の書……どこだろう?」

手分けして探すために、ひとりでテントを回っていると、目の前を派手な格好をした男達に塞がれた。

ナンパ男1「お嬢ちゃん、探し物なら俺達が一緒に探してやろうか?」

ナンパ男2「俺ら余所から来たんだけど、道に迷っちまって困っててさあ」

○○「……あの、私は用事の途中なので……」

ナンパ男1「そうつれないこと言わずに俺達と遊ぼうぜ?」

色褪せた金髪の男が、私の腕を強引に掴む。

○○「……っ、やめてください!」

腕を振り払おうとしても、男の力は強く、私は柳のように体を揺らすことしかできない。

(どうしよう……!)

ナンパ男2「うるせえな、いいからとっとと付いて来いよ!」

○○「シュニー君……っ!」

男が声を張り上げたその時…ー。

シュニー「おいお前ら! そいつは僕の召使い。 その汚い手を離せ」

○○「……っ、シュニー君!?」

声に顔を上げると、いつの間に来たのか、シュニー君がこちらを見据えていた。

○○「危ないですよっ!」

シュニー「ふん。愚かなやつら」

シュニー君が右手を振りかざすと、手のひら大の吹雪が巻き起こり、男にひょうが降り注ぐ。

ナンパ男1「うわあああっ!」

(す、すごい……)

ナンパ男2「てめぇっ! よくもっ」

シュニー「……!」

しかしその隙に、横に居たもうひとりの男が、シュニー君に殴りかかろうとしていた…ー。

 

<<第4話||太陽覚醒へ>>||月覚醒へ>>