月5話 拍子抜けの脱出

ダヤン君がお金と薬を盗んだとして、私も一緒に監禁されてしまった。

ダヤン「何だよお前らっ! オレは何も知らねえよ! 離せっ! 〇〇を離せーーーー!!!」

ダヤン君の悲痛な叫びが耳に残っている。

隣を見れば、悔しげに唇を噛みしめるダヤン君の姿があった。

ダヤン「くっそ! 何でオレが。 あんたまで巻き込むのも、ぜんっぜん意味わかんねえっ!」

〇〇「……」

怒りに猛る彼の様子を、じっと見つめることしかできないでいると……

ダヤン「何だよ。自業自得だって言いたそうな顔だな」

〇〇「そんなこと…―」

ダヤン「オレは絶対に間違ってねえ! 世の中金なんだよ!!」

〇〇「ダヤン君……!」

ダヤン「オレが独りで生きてこれたのは、金があったからだ!!」

〇〇「独りって……」

自分に言い聞かせるように叫ぶダヤン君に、私は問いかけた。

ダヤン「……つまんねー話だよ。ちっさい頃、親と行商に出た時に戦火に巻き込まれちまって。 オレだけ、生き残ったってワケ」

(そんなことが……)

ダヤン「別に不幸だなんて思ってねえ。ギルドは残ったし、金がオレを救ってくれたからな」

そこまで言って、勢いよくダヤン君が立ち上がる。

ダヤン「オレを舐めんなよ……!」

ダヤン君は、施錠された鍵を、がちゃがちゃといじり始めた。

手元を見れば、調合に使った小さな匙を扱い、鍵穴へ差し込んでいる。

〇〇「え? ダヤン君、まさか……」

ダヤン「ああ、こっから逃げ出してやる」

〇〇「そんなことできるの?」

ダヤン「開錠くらい当たり前だろ。独りで生きてくには必要なことだ」

驚きつつも、見守っていると……

ダヤン「開いた……!」

〇〇「嘘……!」

けれど、次の瞬間…―。

ギルドの男達「ダヤン……!」

小屋を出ようとした時、入口にさきほど私達を閉じ込めた男達がやってきた。

ダヤン「なっ……! てめーら、もう気づいて……!! ぜってーオレは捕まんねえぞ!金の恨みを思い知りやがれ!!」

ダヤン君が、身構えたその時…―。

ギルドの男達「申し訳ありませんでした!」

ダヤン「は……?」

ギルドの男達は、私達に深々と頭を下げた…-。

 

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