ダヤン君がお金と薬を盗んだとして、私も一緒に監禁されてしまった。
ダヤン「何だよお前らっ! オレは何も知らねえよ! 離せっ! 〇〇を離せーーーー!!!」
ダヤン君の悲痛な叫びが耳に残っている。
隣を見れば、悔しげに唇を噛みしめるダヤン君の姿があった。
ダヤン「くっそ! 何でオレが。 あんたまで巻き込むのも、ぜんっぜん意味わかんねえっ!」
〇〇「……」
怒りに猛る彼の様子を、じっと見つめることしかできないでいると……
ダヤン「何だよ。自業自得だって言いたそうな顔だな」
〇〇「そんなこと…―」
ダヤン「オレは絶対に間違ってねえ! 世の中金なんだよ!!」
〇〇「ダヤン君……!」
ダヤン「オレが独りで生きてこれたのは、金があったからだ!!」
〇〇「独りって……」
自分に言い聞かせるように叫ぶダヤン君に、私は問いかけた。
ダヤン「……つまんねー話だよ。ちっさい頃、親と行商に出た時に戦火に巻き込まれちまって。 オレだけ、生き残ったってワケ」
(そんなことが……)
ダヤン「別に不幸だなんて思ってねえ。ギルドは残ったし、金がオレを救ってくれたからな」
そこまで言って、勢いよくダヤン君が立ち上がる。
ダヤン「オレを舐めんなよ……!」
ダヤン君は、施錠された鍵を、がちゃがちゃといじり始めた。
手元を見れば、調合に使った小さな匙を扱い、鍵穴へ差し込んでいる。
〇〇「え? ダヤン君、まさか……」
ダヤン「ああ、こっから逃げ出してやる」
〇〇「そんなことできるの?」
ダヤン「開錠くらい当たり前だろ。独りで生きてくには必要なことだ」
驚きつつも、見守っていると……
ダヤン「開いた……!」
〇〇「嘘……!」
けれど、次の瞬間…―。
ギルドの男達「ダヤン……!」
小屋を出ようとした時、入口にさきほど私達を閉じ込めた男達がやってきた。
ダヤン「なっ……! てめーら、もう気づいて……!! ぜってーオレは捕まんねえぞ!金の恨みを思い知りやがれ!!」
ダヤン君が、身構えたその時…―。
ギルドの男達「申し訳ありませんでした!」
ダヤン「は……?」
ギルドの男達は、私達に深々と頭を下げた…-。