第1話 初対面

審判の国・アルビトロ 影の月…―。

目覚めさせた王子に会うために、私は石畳の建物が連なる審判の国・アルビトロを訪れていた。

使者に連れられて部屋に入ると、男の人が微動だにせず立っている。

(あの人……)

彼はしっかりとした体躯で肩幅も広く、意志の強そうな眉をぴくりとも動かさずに、私をじっと見ていた。

カミロ「……」

(目覚めさせた時は話ができなかったから……なんだか緊張する)

○○「あの……カミロさん」

視線をまったく動かさないままのカミロさんに、使者から聞いていた名前で呼びかけ、私は精いっぱいの微笑みを向ける。

それでも、まるで彫像のように動かない。

(瞬きもしないなんて……)

訝しがりながら、数歩近付いたときだった。

カミロ「そ、それ以上、近づかないでくれ」

カミロさんがいきなり声をあげると、ばさっと真っ白で大きな翼を広げる。

いくつかの羽根が飛びちらかったのを、私は唖然として見つめた。

カミロ「……驚かせてすまない。慣れていなくて……どう対応していいか戸惑ってしまった」

○○「慣れていない……?」

カミロ「ああ……その、女性に……」

カミロさんはコホンと咳払いをし、気を取り直したように私に向き直った。

カミロ「俺を目覚めさせてくれた礼を言う。ありがとう。そして我が国へよく来てくれた。歓迎する」

広げた羽を収めるように閉じながら、少しだけ緊張を解く。

カミロ「……」

(どうしたのかな)

カミロ「……せっかく来てくれたんだ。裁判の様子を見学していかないか。俺が案内するが……」

ちらちらと私を見やる彼の顔に、ほのかに赤みがさしていた。

(本当に、女性に慣れていないんだ)

○○「ぜひ、お願いします」

勇気を振り絞って誘ってくれた気がして、私は大きく頷いた…―。

 

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