月7話 熱烈なアピール

熱っぽい瞳を光で揺らせて、ソルベージュさんが私に迫る……

あと少しで、唇が触れてしまいそうになって…―。

○○「だ、駄目です!ソルベージュさんは王子様なんですよ?なのに私だけがいればいいなんて、そんなこと言ったら……」

(お城で待っている人達が可哀想……)

ソルベージュ「なら僕が王子であれば、君は一緒にいてくれるのかい?」

抱き寄せる腕の力が強くなったかと思うと、彼の真剣な瞳が私をとらえた。

(綺麗な色……)

ずっと見ていると、その明るくも深く輝く瞳に吸い込まれそうになる。

○○「そういうことじゃ……」

ソルベージュ「しかし君は先ほど僕に言ったじゃないか、あれは僕の傍にいてくれるという意味じゃないのかい?」

○○「私があなたの傍にいることと、あなたが王子なことは、また別の問題で……」

ソルベージュ「そんなまどろっこしい言い方じゃわからないよ……!」

切なげに瞳を細めて、彼は私から一度視線を外したかと思うと、ゆっくりと首を左右に振って立ち上がった。

ソルベージュ「君はつれない人だ……」

寂しくつぶやかれた言葉が森に響いた…―。

気づけば…―。

いつの間にか、辺りは暗くなり始めていた。

ソルベージュ「とりあえず、街に戻ろう。女性がこのような森で夜を迎えるのは危ないからね」

ずっと物思いにふけっていたソルベージュさんが、立ち上がる。

○○「はい……」

少しだけ寂しげな響きを持った言葉に、私も立ち上がろうとすると……

ソルベージュ「さあ、手をどうぞ」

○○「あ、ありがとうございます……」

さり気なく伸ばされた彼の手をとる。

彼の指先は、初めて触れた時と同じで、少し冷たい。

でも…―。

(やっぱり、こういうところは本当に王子様らしい……)

手慣れた彼のエスコートが、今は少しだけ胸に痛かった……

しばらく歩いて街に戻って来た頃には、すっかり陽は暮れていた。

夏の陽射しが沈んでしまうと、足元を覆う氷のせいか、少しだけ肌寒い。

ソルベージュ「冷えるかい?」

○○「あ……」

そっと抱き寄せられると、彼の髪から甘い香りが漂った。

ソルベージュ「このまま夜の街を彷徨うのも魅力的ではあるけれど……ここは、僕が君をとっておきのお店に案内するよ……」

そう言って目を細める彼は、それまでよりぐっと大人っぽい雰囲気をまとっていた…―。

 

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