第4話 ホワイトクリスマス

サンタクロースに会うために、キャピタさんの提案で街中の靴下を買い集めていくと……

○○「あ……」

ふわふわとした雪が、夜空から舞い落ちてきた。

○○「今日がクリスマスなら、ホワイトクリスマスだったな……」

思わずこぼれた言葉に、キャピタさんが首を傾げた。

キャピタ「ホワイト……? それは、一体何だ?」

○○「あ、雪の降るクリスマスのことを特別にそう呼ぶんです」

キャピタ「ほう……」

キャピタさんはそう言いながら、手をかざして真っ白な雪を受け止める。

キャピタ「特別……か。なるほど、聞けば聞くほどに興味深い。 できればもっと、クリスマスの話を聞かせてもらえるだろうか。 特に……貴方の思い出話を聞いてみたい」

○○「私の……?」

期待をするような眼差しを受け、私はゆっくりと記憶を辿る。

○○「そうですね。やっぱり、ケーキが一番楽しみだったかもしれません。 生クリームたっぷりのケーキにデコレーションをしたものとか、ブッシュドノエルとか……」

キャピタ「ブッシュドノエル?」

○○「薪のような形をした、クリスマス用のケーキです」

甘い味が蘇ってきて、自然と口元が綻んでしまう。

キャピタ「薪、か。確かにこの時期はよく目にするが……他にも何か面白いものはあるのか?」

○○「そうですね。クリスマスが来るのを楽しみに待つための、アドベントカレンダーというのも……」

キャピタ「それはどういったものだ?」

○○「カレンダーの日付が窓になっていて、中にプレゼントが入っているんです」

キャピタ「なるほど……よくできた仕組みだな」

(よかった。喜んでくれてる)

知識欲が満たされて嬉しそうにするキャピタさんを見ると、胸の奥がじんわりと温かくなる。

キャピタ「しかし、せっかくならそれらも揃えてみたいものだな」

○○「えっ? でも……」

キャピタ「貴方の言いたいことはわかる。しかし、ないなら似たものを用意すればいい。 すまないが、もう少し買い物に付き合ってくれるか?」

○○「はい。もちろんいいですよ」

私達はケーキや飾りを買い求めるため、再び街の中を回る。

そうして、しばらくの後…―。

キャピタ「すっかり遅くなってしまったな」

買い物を終えた私達は、一休みするために立ち寄った街の広場で、ひときわ豪華なイルミネーションを眺めていた。

○○「綺麗……」

少しの間、目の前の光景をうっとりと見つめた後、私は隣に並ぶキャピタさんに声をかける。

○○「幻想的ですね」

キャピタ「ああ。まるで、切り取られた絵画のようだ。 ……この光景を、貴方を一緒に見ることができてよかった」

○○「え……?」

キャピタ「元来、こういったものには興味がなかったが……。 今は不思議と、そう思える」

○○「キャピタさん……」

無数の光に包まれながら微笑む彼に、胸が一つ、大きく高鳴った。

○○「クリスマスも、こんな感じです」

キャピタ「そうか。クリスマスとは、幸福なものなのだな」

白い息と共に吐き出された言葉が、心に優しく染み込んでゆく。

キャピタ「そういえば……」

○○「え?」

私は、何かを思い出したようにつぶやく彼を見上げる。

キャピタ「先ほどは、どこに行っていた? 言ってくれれば、私も同行したものを」

○○「あ、えっと……」

(やっぱり、気になるよね)

キャピタさんは私が少しの間、離れて買い物をしていた時のことが気になっているようだったけれど……

○○「いえ、少し私的なもので……」

まだ答えるわけにはいかず、私は曖昧に返事をした。

すると、その瞬間……

○○「……っ」

冷たい風に首を撫でられて、思わず肩をすくめる。

キャピタ「寒いか?」

キャピタさんの腕が私に伸び、二人の距離を埋めるように近づく。

キャピタ「さっきは少し離れただけだったが……」

言い終えないうちに肩に腕がまわり、耳元でキャピタさんの声が聞こえた。

キャピタ「私も妙に寒く感じた……。 だが今は……電飾の人工的な光でさえ、貴方がいるとあたたかい。 私がこのように感じるなど、不思議だ……クリスマスというもの、やはり興味が尽きそうにない」

すぐ近くに感じる彼の体温と煙管の匂いに、胸が大きく高鳴る。

(今、顔を上げたら、きっとキャピタさんと目が合ってしまう……)

これ以上鼓動が早くなり、キャピタさんに伝わることを恐れた私は、火照る顔を伏せたまま、彼の優しい温もりに身を委ね続けたのだった…―。

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