第6話 ジェリーの弱点

静かな店内に、時折グラスを合わせる音が響いてくる…-。

ジェリーが口にしたのは、私が想像もしていなかった悩みだった。

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ジェラルド『ラブロマンスも素敵だけど、それしかできないと……。 見た目だけだって、記者達が影で言ってるの、知ってるんです……』

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(あんなに素敵な役をこなしていたのに……)

舞台挨拶で上映された映画を思い出して、胸が痛くなる。

ジェラルド「この先、どうしたらいいのかと……」

暗い表情で窓の外を眺めるジェリーを見て、私も思考を巡らせる。

〇〇「監督や制作会社の人達にアピールしてみてはどうでしょうか? ジェリーの挑戦してみたい、その……」

ジェラルド「アクションとか?」

〇〇「はい」

ジェラルド「……」

けれどジェリーの表情は、相変わらず浮かないまま……

〇〇「難しいんでしょうか?」

ジェラルド「……難しいというか、これから話すこと、笑わずに聞いてくれますか?」

(ジェリー……?)

神妙な面持ちでつぶやいたジェリーに、私は……

〇〇「どうして? 笑われるような話なんですか?」

ジェラルド「笑い話というか……」

聞き返すと、ジェリーは気恥ずかしそうに苦笑した。

ジェラルド「実は僕、命に関わるようなレベルで……すごく運動音痴なんです」

〇〇「……え?」

ジェラルド「だから運動音痴……」

早口で言って、額を手で覆う。

〇〇「……」

思いもよらないジェリーの言葉に、私は瞳を瞬かせる。

ジェラルド「……やっぱり恥ずかしいですね、自分の弱点を人に言うのは。 何に対してもポジティブなのが僕のモットーなんですが、運動だけはダメなんです……」

〇〇「そ、そんなことは…-」

ジェラルド「ううん、前なんて普通の恋愛物だったのに、走っている姿がかっこよくないからNGと言われて……。 その時はプロのランナーの走りをダンスの振りを覚えるようにして覚えて……。 事無きを得たんですが……。 だから、アクション映画なんてとても……」

ジェリーは大きくため息をつくと、黙り込んでしまった。

〇〇「……」

私も彼の様子に、何と言葉をかけていいものかがわからずに……

ジェリーのため息に重なって、思わず、私までため息をこぼしてしまうのだった…-。

 

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