太陽8話 アクションスターへ!

ジェリーが運動音痴克服のため、本格的なトレーニングを開始して数日が経った頃…-。

私はこの日、彼の様子をうかがうため城を訪れていた。

城のホールでは、専属のトレーナーをつけて、ジェリーがトレーニングに励んでいた。

かなりハードな練習なのか、床には汗の落ちた跡がある。

(頑張ってるんだ……)

必死のトレーニングの様子に、思わず声をかけるのも忘れていると……

ジェラルド「〇〇!」

私の姿を認めたジェリーが、嬉しそうに駆け寄ってきた。

ジェラルド「嬉しいです、来てくれたんですね!」

〇〇「……はい、応援に。これ、良かったら」

行きがけに買ってきた、スポーツドリンクを差し出す。

ジェラルド「ありがとう……!」

にこやかな笑顔で応え、彼はそれを受け取ってくれた。

〇〇「調子はどうですか?」

ジェラルド「好調です。ちょうど3日後に新しいオーディションも決定したので。 しかも、アクション映画で有名な監督の次回作なんです!」

〇〇「本当ですか!? 特訓の成果がでるといいですね」

ジェラルド「まだ自信はないですけどね」

そうは言うけれど、ジェリーの表情は心なしか前よりも男らしい。

(合格するといいな……)

必ず応援に行くと伝えて、特訓の邪魔になるといけないからと、この日は城を後にすることにした…-。

……

そして数日後…-。

私はジェリーを応援するために、オーディション会場を訪れた。

だけど、関係者以外立ち入り禁止との張り紙がしてある。

(ずいぶん大きな会場……)

オーディションの規模に、思わず息を呑む。

するとそこに、マネージャーの運転する車でジェリーがやってきた。

〇〇「今日、頑張ってくださいね」

ジェラルド「はい……」

少し緊張してるのか、いつもより表情が硬い。

ジェラルド「あの……〇〇、少し気合を入れてもらえませんか?」

突然の申し出に、瞬きをしながら彼の顔を見る。

ジェラルド「背中、叩いて欲しいんです。僕が最後までやりきれるように」

〇〇「私なんかで良ければ」

私は言われた通り、力いっぱい彼の背中を叩いた。

ジェラルド「……よしっ!!」

ジェリーは自らも頬を叩き、目に力を宿す。

ジェラルド「……行ってきます!」

〇〇「はい!」

その時、背の高い彼が少し屈んで……

〇〇「……っ!」

私の頬に、ジェリーの唇が触れた。

〇〇「い、今の……」

柔らかな感覚が残るのに、頬が熱くなる……

ジェラルド「さっきのお礼です、じゃあ行ってきます!」

無邪気に笑い、ジェリーは背を向けて会場に歩み出した。

その背中は、舞台挨拶の時に映画で見た時よりも、逞しく頼もしくなってるように見えた…-。

 

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