第3話 ティアラのお披露目

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グウィード『じゃあ存分に楽しんでね、子猫ちゃん◆』

○○『え? あ……。 行っちゃった……』

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(もう少し一緒に話せると思ったのに)

シャンパンを楽しみながら、招待客の話に耳を傾ける。

招待客の男「コロナ王家の方々が作られるティアラは、持ち主に栄光をもたらすそうですよ」

○○「そうなんですか?」

招待客の男「ええ。ですから、欲しいと思われる方は多いのではないでしょうか」

招待客の女「もちろんですわ。ティアラに選ばれるために着飾って来たんですから」

(栄光……すごいな、魔法でもかけられているみたい)

そんなことを考えながら、グラスに口をつける。

グウィード「お客様、飲みすぎですよ◆」

○○「っ……!」

聞き覚えのある声と甘い花の香りで、すぐに彼だとわかったけれども…―。

○○「グウィードさん……?」

振り向いても、もうそこに彼の姿はなかった。

(傍にいたかと思ったら、すぐに消えてしまう……)

(もう少し、一緒に話せたらいいのに)

もどかしさにため息を吐く。

すると…―。

招待客の男「ティアラがお披露目されるようですよ」

招待客の女「私達も見に行きましょう」

○○「え……? まっ、待ってください……!」

ティアラの方へと向かう人々の勢いに押され、私は倒れそうになってしまう。

(あ……!)

するとその時、転びそうになった私の体を、誰かがふわりと抱き止めてくれた。

(この甘い花の香り……)

グウィード「子猫ちゃん、大丈夫かい?」

○○「グウィード……さん?」

見上げると、グウィードさんの優しい眼差しが私を見つめていた。

グウィード「本当に危なっかしいね、子猫ちゃんは♠ 目を離したら、どこかに飛んで行ってしまいそうだ◆」

その瞳を見ると、彼が私のことを心配してくれたことが痛いほどわかった。

○○「す、すみません……!」

謝る私の手を、グウィードさんが優しく包み込んだ。

グウィード「子猫ちゃん、おいで。こちらからの方がティアラがよく見える♪」

○○「はい……!」

彼に導かれるまま、私は螺旋階段を登っていった。

……

グウィードさんと共に、二階からティアラを眺める。

彼の言う通り、この場所からはティアラがとてもよく見えた。

○○「これがコロナ国の方が作られたティアラなんですね。とっても綺麗……」

グウィード「そうだね。これだけの人が見たがるはずだ◆」

○○「きっとこれを受け取る方は、素敵な方なんでしょうね」

(誰が選ばれるんだろう。見てみたいな……)

グウィード「子猫ちゃんは欲しくないのかい?」

○○「私ですか? 私には立派過ぎますよ。今のおしゃれで精一杯です」

私は冗談めかして、スカートの裾を広げてみせる。

けれどグウィードさんは、笑うどころか、驚いたように仮面の奥の瞳を見開いた。

(え……?)

そして、その瞳はすぐに柔らかいものへと変わった。

その彼の表情があまりにも優しくて、私の胸がトクンと音を立てる。

○○「っ……」

(ビックリした)

(あんな顔で笑われたら……)

戸惑っていることに気づかれたくなくて、睫毛を伏せる。

グウィード「やっぱり君はおもしろいね♠」

囁くような優しい声が、頭上から降ってくる。

けれど…―。

グウィード「パーティは遅くまで続いているから、ほど良いところで帰った方がいい◆」

(え……?)

突然、拒絶するような言葉を投げかけられ、私はグウィードさんを見上げた。

○○「迷惑ですか?」

思わず口にした私の言葉に、グウィードさんは困ったように眉尻を下げた。

グウィード「そうじゃないよ。子猫ちゃんがいると僕は気になって……」

そこまで話すと、グウィードさんは自分の口を手で覆った。

○○「グウィードさん?」

グウィード「……いや、どうやら僕も酔ってしまったみたいだ♠」

肩をすくめると、彼は曖昧に笑う。

(何か、誤魔化した……?)

そう思わずにはいられない笑みだった。

私の視線から逃れたいのか、彼は私から少し離れる。

(またどこかに行ってしまう……?)

気づくと、私は彼の服を掴んでいた。

グウィード「子猫ちゃん?」

○○「あ……すみません」

グウィード「僕が恋しいのかな?」

○○「……はい」

グウィード「おや……」

グウィードさんが、くすりと笑みをこぼす。

グウィード「君は正直だね……♠ まいったな……」

顔を手で覆い、彼はクツクツと笑い声を上げる。

(手で隠しているけど、グウィードさん……)

(顔が赤くなってる?)

グウィード「困った子だ。だから君から離れていたのに」

○○「え……?」

顔から手を離すと、グウィードさんは私に笑いかける。

グウィード「子猫ちゃんの気持ちは嬉しいけど……」

そこまで話して、彼は片手を高く上げる。

それを合図に、突然、会場から灯りが消えた。

○○「何……!?」

グウィード「これから、ゲームの時間なんだ◆」

耳元で、グウィードさんの囁く声が聞こえる。

耳にかかる吐息に、顔が熱くなっていった…―。

 

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