第1話 優しくない彼

泡沫の国・アフロス 蒼の月…―。

新緑の若葉に街が彩られる頃…―。

この国に世界中から招待された王族や貴族が集まり、『婚宴の儀』が執り行われる。

○○「緊張した……」

儀式が終わり、私は神殿の外へと出た。

(やっぱり、こういう儀式って緊張する……)

『婚宴の儀』…-。

アフロスに古くから伝わる儀式で、清めを受け神々から祝福を承るのだという。

儀式が終わった解放感からか、ぼんやりと参列している人を見渡す。

すると…―。

(あれ?)

参列する人の中に、見知った後ろ姿を見つけた。

○○「もしかして、澄快さん?」

澄快「え?」

私の方を振り向き、彼は驚いたように目を見開いた。

澄快「○○!? なんでここに……」

○○「お久しぶりです」

会えた嬉しさから、彼の方へと駆け寄る。

けれど…―。

澄快「おっ、大きい声出すな!」

○○「っ……!」

不意に澄快さんの大きな手が、私の口を覆った。

彼はそのまま私の肩を、後ろから抱き寄せる。

澄快「いいか、このまま静かに外に出るぞ」

私の耳元で彼が声をひそめて囁く。

澄快「わかってるな? 絶対に声を出すなよ? ……絶対だぞ」

(い、いったい、何が……?)

彼の低い声に気圧されて、私は声を出せないまま、必死に何度も頷いた…―。

 

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