泡沫の国・アフロス 蒼の月…―。
新緑の若葉に街が彩られる頃…―。
この国に世界中から招待された王族や貴族が集まり、『婚宴の儀』が執り行われる。
○○「緊張した……」
儀式が終わり、私は神殿の外へと出た。
(やっぱり、こういう儀式って緊張する……)
『婚宴の儀』…-。
アフロスに古くから伝わる儀式で、清めを受け神々から祝福を承るのだという。
儀式が終わった解放感からか、ぼんやりと参列している人を見渡す。
すると…―。
(あれ?)
参列する人の中に、見知った後ろ姿を見つけた。
○○「もしかして、澄快さん?」
澄快「え?」
私の方を振り向き、彼は驚いたように目を見開いた。
澄快「○○!? なんでここに……」
○○「お久しぶりです」
会えた嬉しさから、彼の方へと駆け寄る。
けれど…―。
澄快「おっ、大きい声出すな!」
○○「っ……!」
不意に澄快さんの大きな手が、私の口を覆った。
彼はそのまま私の肩を、後ろから抱き寄せる。
澄快「いいか、このまま静かに外に出るぞ」
私の耳元で彼が声をひそめて囁く。
澄快「わかってるな? 絶対に声を出すなよ? ……絶対だぞ」
(い、いったい、何が……?)
彼の低い声に気圧されて、私は声を出せないまま、必死に何度も頷いた…―。