第2話 神の武器

モンスターから逃げ切った私達は、城壁の中へと足を踏み入れる。

そびえ立つ壁の内側にある街は多くの人々が行き交い、活気に満ちていた。

○○「とても素敵な街ですね。でも、どうして壁の内側に・・・・・・?」

トール「モンスターの襲来を防ぐためだ。 モンスティートは巨大で獰猛なモンスターが数多く現れる、過酷な環境下にある。 その中で身を守りながら生きていくための知恵だ」

○○「それじゃあ、安心して暮らせないということですか・・・・・・?」

トール「ああ。だから俺達王族や力のある者達が、モンスターを討伐しているんだ」

隣を歩くトールくんが足を止めて振り返る。

トール「見せてやる。この国を守る力を」

そう言うなり、トールくんは持っていた大きなハンマーの柄を強く握った。

すると、次の瞬間・・・-。

○○「これは・・・・・・」

トールくんの体を淡い光が包み込む。

けれどそれは一瞬のことで、光は静かに消えていった。

トール「ミョルニルだ。俺の一族に造られた神の武器・・・・・・。 このミョルニルはアースガルズの宿敵、ヨルムンガンドを倒す者に受け継がれるんだ」

○○「すごい・・・・・・」

私は、先ほどの幻想的な光景を思い返す。

○○「ミョルニルがあれば、どんなものでも守れそうですね」

トール「ああ。俺は、この国を守るためにミョルニルを振るっている。 選ばれた者として当然の責務だからな」

トールくんはミョルニルの柄を握りながら、さも当然といったように言葉を紡ぐ。

(そういえば・・・・・・)

○○「ヨルムンガンドというのは、モンスターなんですか?」

トール「ああ・・・・・・どんな敵も倒してきた俺達が、唯一倒せていない蛇のモンスターだ。 俺には、奴を倒す使命がある」

そう言った後、トールくんが私へと視線を向けた。

トール「もうすぐヨルムンガンドが来る。今外に出れば危険だ」

○○「えっ?」

トール「ずっと奴と戦ってきた俺にはわかるんだよ。だから・・・・・・。 落ち着くまではこの城にいればいい」

○○「でも・・・・・・」

申し訳なさから、私は思わず口ごもってしまう。

トール「遠慮はいらない。何かあってからじゃ遅いからな」

○○「トールくん・・・・・・」

(こんなふうに気遣ってくれるなんて、トールくんって優しいな)

私はトールくんにお礼を言おうと、口を開きかけた。

けれど・・・・・・

トール「さっきも言った通り、この辺りは屈強な男達でも手を焼くモンスターがうろついている。 アンタみたいなどんくさい女は、すぐにモンスターに食べられておしまいだからな」

○○「えっ・・・・・・?」

冷たく言い放つトールくんに、私は驚きの声を上げてしまう。

するとトールくんは、私から視線を外して遠くの空を見上げ・・・・・・

トール「余計なことはせずにおとなしくしてろ。一応は恩人なんだからな。 俺とミョルニルがヨルムンガンドを倒すまで、ゆっくりしていくといい」

(それって・・・・・・)

言葉こそ、乱暴で冷たい。

けれどその中には、ほのかな優しさがあるように思えてならなかった・・・-。

 

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