太陽7話 誰よりも男の子…

―――――

トルマリ『ぼく、男の子なんだよ』

―――――

その後…-。

トルマリと一緒に城へ向かっていく途中……

徐々に足に痛みを感じていった。

〇〇「……っ!」

思わず足を止めてしまう。

(あ……)

たくさん歩いたせいか、靴擦れを起こしてしまっていた。

トルマリ「どうしたの?」

隣を並んで歩いていたトルマリが、私に目を向ける。

〇〇「ごめん、何でもないよ。行こう」

(トルマリに迷惑かけられない)

痛みをこらえ、歩き出そうとすると…-。

トルマリ「……ぼくにつかまって」

〇〇「え?」

トルマリ「よっ! っと」

〇〇「……! ちょ、ちょっとトルマリ!」

トルマリが突然私を横抱きにし、城への道を進み始めた。

〇〇「わ、私、本当に平気だから!」

(足が痛いってどうしてすぐにわかったのかな)

トルマリは優しく私に微笑みかける。

トルマリ「こういう靴って、かかとが痛くなっちゃうよね」

(そうか……トルマリだから、わかったんだ)

〇〇「ありがとう……」

そう言うとトルマリは、目を細めて優しく笑ってくれた。

その顔を、腕の中からそっと見ていた…-。

私は、トルマリに抱かれたまま城へと到着した。

城の従者さん達が、トルマリの帰還に驚き、喜んで駆け寄って来る。

従者「トルマリ様……ご無事で!」

トルマリは私をその場に下ろすと、そっと支えるように腰に手を回す。

(なんでだろう、トルマリに触られると、胸がどきどきする……)

トルマリ「〇〇が助けてくれたんだ」

執事「何と御礼を申し上げて良いか……」

トルマリ「……」

トルマリは何か思案していたが、やがて明るい声を発した。

トルマリ「ねえ! ぼく、〇〇に、感謝を込めてパーティーを開きたいな!」

〇〇「えっ? パーティー?」

執事「それは良い考えですね。今晩、早速準備いたしますか?」

トルマリ「うん! よろしく!」

〇〇「いいよ、トルマリ。パーティーなんて」

トルマリ「どうして? すごく楽しいよ、きっと! 〇〇とパーティーなんてとっても嬉しい」

(私も嬉しいけど……ドレスもないし……)

突然トルマリが私の顔を覗きこむ。

トルマリ「心配しないで。可愛いドレス、ぼくが〇〇に見立ててあげる♪」

〇〇「え? な、なんで考えてることわかったの?」

トルマリは悪戯っぽく微笑むと、私の手を引き、走り出す。

(トルマリには、全部心を見透かされているみたい)

トルマリは、部屋に着くなり私のドレスを選び始めた。

トルマリ「〇〇は、明るい色のドレスが似合うと思うんだよね」

ドレスに装飾品、そしてメイクまで…―。

トルマリが慣れた手つきで、私をドレスアップさせていく。

鏡の中の私が自分ではないようで、なんだかくすぐったい気持ちになる。

(……素敵なドレス)

〇〇「ありがとう、トルマリ…-」

振り返ると、トルマリがドレスアップした私を眺め、にっこりと微笑んでいる。

〇〇「どうしたの?」

トルマリ「はい、これ」

トルマリが渡してくれたのは、ヒールの低い、私の足にぴったりのサイズの可愛い靴だった。

トルマリ「これだったら、痛くないと思う」

(トルマリ……)

〇〇「ありがとう!」

靴を渡されてトルマリにお礼を言うと、彼はじっと私を見つめてきた。

トルマリ「やっぱりそのドレス、ぼくが着るより似合ってる」

トルマリの視線に、胸が音を立て始める。

(あれ、私……?)

〇〇「そ、そんなことないよ……」

恥ずかしさに、思わず後ろを向いてしまった時…-。

〇〇「……っ!」

ドレスの裾を踏んで、倒れ込んでしまいそうになる。

トルマリ「危ないっ!」

トルマリが、私を後ろから抱き込むように、支えてくれた。

〇〇「……! あ、ありがとう……」

トルマリ「危なっかしいなあ、〇〇は」

トルマリが、笑いながら腕をゆっくりと私から離す。

(どんなにドレスが似合っても、やっぱりトルマリは男の子なんだ)

華奢に見えて、しなやかで力強いトルマリの腕を見つめて、心の奥で、トクンと小さな音がした…-。

 

<<太陽6話||太陽最終話>>