第5話 春への約束

アベルディア城での、晩餐会の後…―。

私達はベウルさんの部屋で談笑しながら、楽しい時間を過ごしていた。

ベウル「ごめんね、○○ちゃん。ずっとおれの弟達がべったりで……」

○○「いえ。すごく楽しいです」

ちょうどその時、扉をノックする音が聞こえ、お妃様がやってきた。

皇后「姫、お会いできるのを楽しみにしていました。ベウルを助けてくれて本当にありがとう」

ベウルさんとよく似たお妃様は、あたたかみのある優しい笑顔を私に向けてくれた。

皇后「さあ、子ども達、姫に迷惑がかかりますから、そろそろ自分の部屋に……」

ベウルの妹「やだ、もっとお姫様と一緒にいるもん!」

皇后「まあ、そのようなわがままを……」

ベウル「困ったな……」

そう言いながらも、小さな妹を抱き上げるベウルさんの目はとても優しい。

(ベウルさん……妹さん達が、大好きなんだな)

ベウルさんのご家族の様子を見て、私の心にも暖かな灯がともった気がした…―。

……

それから数日…―。

冬ごもりの準備も終わり、私もアベルディアを発つ日がやって来た。

(皆と別れるの、寂しいな……それに……)

ー----

ベウル「そんなかわいい笑顔を浮かべて、そんなかわいいこと言われると……どうしたらいいか、わかんなくなるよ」

ー----

(ベウルさんと……本当はもっと一緒にいたい)

彼と一緒に過ごす時間は、優しさと暖かさに包まれていて……私はいつしか、ベウルさんの隣に居ることに、居心地の良さを感じるようになっていた。

その時…―。

ベウルの妹「お姫様、帰らないで!」

扉が勢いよく開いて、ベウルさんの弟さん達が部屋に飛び込んできた。

ベウルの弟「ねえねえ、お姫様も一緒に冬眠しようよ!」

○○「皆……」

しがみついてくる子ども達の頭を苦笑しながら撫でていると、遅れてベウルさんが姿を現した。

ベウル「おまえ達、お姫様を困らせたらダメだって言っただろう?」

ベウルの妹「はーい……お姫様、また遊びに来てね……」

○○「うん、ありがとう。約束するね」

弟さん達はベウルさんにたしなめられて、しょんぼりとして部屋を出ていった。

ベウル「……まったく、すっかり懐いちゃって」

○○「嬉しいです」

ベウルさんは困ったように頭を掻いていたけれど……

ベウル「……でも実は、おれももっと○○ちゃんと、一緒に過ごしたかったんだ」

その言葉に驚いて顔を上げると、ベウルさんは真剣な顔つきで私を見下ろしていた。

○○「嬉しいです……」

ベウル「それほんとに?」

○○「はい……」

ベウル「じゃあさ……次の約束をさせてくれる?」

少し頬を赤らめながら、ベウルさんは私の両手を握った。

ベウル「春になったら、また会いに来て欲しい」

○○「はい、きっと」

木枯らしが、窓を揺らす…―。

けれど、ベウルさんに包まれた手は、とても暖かかった…―。

 

<<第4話||太陽覚醒へ>>||月覚醒へ>>