第1話 幽霊船の王子

海賊の国・アンキュラ 白の月…―。

まぶしい陽射しが降り注ぐ中……アンキュラの海が、穏やかな波を寄せては返す。

煌めく砂浜で、その輝きに負けない一粒の光を見つけ、私は足を止めた。

(指輪……!)

太陽の光を反射し、まるでそれ自体が輝いているような指輪を見つけ、胸の前で両手を組む。

すると…―。

〇〇「っ……!」

激しい光の洪水が一瞬にして溢れ出し、それがやがてぱらぱらと消えていくと……

??「ん……」

立派な体躯の男性が姿を現し、ゆっくりと起き上がる。

〇〇「あの、大丈夫ですか?」

やや朦朧とした様子の、その男性の顔を覗き込めば……

〇〇「あ……」

不思議な魅力をたたえた紫色の瞳に、思わず吸い込まれてしまいそうになる。

(なんて強くて……悲しそうな瞳)

しばらくそのまま、見つめてしまっていると…―。

??「ん……はぁ……ここは、どこだ……? 俺の船は……」

長らく発していなかったのか、かすれた響きを持った声が耳に届く。

〇〇「あの……大丈夫ですか?」

もう一度声をかけた瞬間、驚いたように男性が私を凝視する。

それから、がっしりと私の腕を強く掴んだ。

(っ! 強い力……)

それは、つい先ほどまで眠っていたとは思えないような力強さだった。

??「女……貴様が俺を……すくったのか?」

〇〇「……は、はい」

不意に、背筋に寒い感覚を覚えたかと思うと…―。

いつの間にか辺りには霧が立ち込め、空に雨雲が集まり始めていた。

(どうして? 急に天気が……)

??「来い。俺の船へ」

〇〇「っ……!」

不意に、きつく掴まれていた腕を強引に引き寄せられる。

(え……? この船、いつの間に現れて……)

見れば、目の前には大きな船が現れていた。

ぼろぼろな様子ながら、かつては立派な船だった面影を持つ巨大な姿に驚きを隠せない。

(幽霊……船……?)

深い霧の中に突如として現れた謎の船は、そう呼ぶにふさわしい風貌だった。

私は目覚めさせた男性に、その船へそのまま乗せられてしまったのだった…―。

 

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