○○ちゃんと出会ってから、ぼくは変わった。
(なんだか、全身に力がみなぎっている感じがする)
(こんなぼく、初めてだ)
頑張るぼくってどう思う? という質問に、○○ちゃんは、かっこいいと思うと答えてくれた。
(○○ちゃんに、かっこいいって思われたい)
その一心で、ぼくは会議に出ることを決めた。
(でも、せっかく頑張るんだし……)
(○○ちゃんに甘えられる、絶好のチャンスかもしれない)
アケディア「……ぼく、ご褒美がないと頑張れない」
○○「ご褒美?」
アケディア「考えておいてね」
ぼくは、強引に約束をして部屋を出た。
そして、部屋を出て会議室に向かう途中も…―。
(○○ちゃん、どんなご褒美くれるのかな)
ぼくは、ご褒美のことばかり考えてしまう。
(会議が終わった後は疲れるから、○○ちゃんと気持ちいいこといっぱいしたいな)
(干したての、ふかふかの毛布に包まったり)
(一日中ベッドの上でだらだらしたり……)
(あっ。でも、それじゃあ今までのぼくと変わらない……?)
従者「……アケディア様?」
従者が、心配そうにぼくの顔を覗き込んできた。
(駄目駄目、ちゃんとしなきゃ!)
アケディア「大丈夫だよ。今日の資料はどれ?」
ぼくは、改めて気持ちを引き締め直す。
全ては、○○ちゃんにカッコいいところを見せるために…―。
…
……
会議が終わって廊下に出ると、○○ちゃんが待っていてくれた。
○○「アケディアくん、お疲れさま」
○○ちゃんの笑顔を見るだけで、自然と疲れがとれていく。
アケディア「うん、疲れたよー。でも、うまく議論がまとまってよかった。 それより、○○ちゃん。 ご褒美は?」
○○「ごめん……アケディアくんが喜ぶことは何かなって、考えてみたんだけど……」
その表情から、一生懸命考えてくれていたことがわかる。
(それだけで、すごく嬉しいよ……)
嬉しさから、意図せず笑みがこぼれてしまう。
こうしてぼく達は、ご褒美として動物園でデートをすることになった…―。
…
……
○○「もう少し頑張って、アケディアくん!」
会議に出席をし、外にまで出てしまったせいで、僕はすっかり疲れてしまった。
(体に力が入らない)
(もう、無理だ……)
○○「……アケディアくん!!」
○○ちゃんの声を聞きながら、ぼくの意識は遠のいていってしまい…―。
気がついたら、ぼくは自分の部屋のベッドの中にいた。
窓から差し込む朝日に、思わず目を細める。
(キラキラして、綺麗だな)
朝日を綺麗だなんて思ったのは、初めてだった。
ふと横を見ると、○○ちゃんが小さな寝息を立てて眠っていた。
(可愛い……)
(嬉しい、楽しい、綺麗、可愛い…―)
○○ちゃんと一緒にいると、色々と感情が騒がしい。
(こんなこと、前までは面倒くさいと思っていたのに……)
今は、面倒くさいのも良いかなんて思ってしまう。
(ぼくらしくないけど、こんなぼくも嫌いじゃない)
ふと時計を見ると、いつも起きる時間よりうんと早い時間だった。
ぼくは、○○ちゃんの寝顔をじっと見つめる。
アケディア「ぐっすり寝てる……」
そっと○○ちゃんのほっぺたを触ると、とても柔らかく温かい。
(早起きするっていいな……)
アケディア「なんだか得した気分だ」
○○「うーん……」
暫くすると、○○ちゃんが目を覚ました。
(もう少し寝顔を見ていたかったけど……)
(でも、この気持ちを伝えたい)
アケディア「おはよう、○○ちゃん」
○○「ア、アケディアくん?」
アケディア「早起きってしてみるものだね」
○○「えっ……」
アケディア「だって、きみの寝顔が見れたから」
○○「……!」
○○ちゃんは、慌てて顔を隠してしまう。
耳まで真っ赤になっていた。
(照れてる○○ちゃんも可愛いな……)
(もっと困らせてみたくなっちゃう)
アケディア「隠さないで。すごく可愛いから」
彼女の両手を掴み、その顔を覗き込む。
(色んな彼女の表情を見てみたい……)
こんな欲望にかられたのは、今まで一度もなかった。
(誰かを好きになるなんて、面倒くさいこと……ぼくがするなんて思わなかった)
初めての欲望に振り回されながら、ぼくはその深みに陥っていくのだった…―。
おわり。