第1話 願いの声

泡沫の国・アフロス 蒼の月…-。

この時期、世界中の王族達がこのアフロスの地に招かれる。

古から伝わる婚宴の儀により、神々からの祝福を受けるためと聞いていた。

トロイメアの姫として、儀式に参列することになった私は…-。

(婚宴の儀って、どんなものなんだろう?)

儀式を数日後に控え、私は祭場となる神殿を訪れていた。

(緊張するけど……少し中を見ておきたい)

この国の儀式において、礼装となるウェディングドレスに身を包んだ私は、神殿の扉の前に立ち、ゆっくりと真輪の取っ手を引いた……

……

(え……?)

一瞬……静謐な空間の中に、星々を散りばめたような優しい光が降り注ぐ。

やがて目が慣れると、ステンドグラスから差し込む光の中に、一人たたずむ後ろ姿を見つけた。

(あの人は……)

気配を感じたのか、ゆっくりと振り返ったその人は…-。

シュテル「……」

(シュテルさん……!)

流星の国・メテオベールのシュテル王子だった。

シュテル「〇〇……」

私に気づいたシュテルさんの唇が、微かな笑みを刻む。

星屑のように儚げな光を帯びて、静かに瞬く青色の瞳に引きつけられた。

〇〇「お久しぶりです。シュテルさんも儀式に参列されるのですね」

けれど…-。

シュテル「いや……」

シュテルさんの透き通った青色の瞳が、どこか儚げにゆらめく。

シュテル「この地から、願いの声が聞こえた」

(それじゃ、シュテルさんは誰かの願いをかなえるために、ここへ……?)

シュテルさんの腰元で、星屑時計が淡い光を放っている。

長寿であるメテオベールの王族は、不思議な力を持っている。

それは、自分の永い命をわずかに削ることで、人の願いを叶えるというもの…―。

(けれど、シュテルさんは体が弱いから……)

切ない思いで彼を見つめていると、彼は優しく目を細めた。

シュテル「だが……また君に会えて、嬉しく思う」

(シュテルさん……)

シュテルさんの飾らない言葉が、私の胸に温かく響いた…-。

 

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